January 23, 2024

『言語の本質』読みました。

大谷隆です。

今井むつみ、秋田喜美・著『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』

面白かったです。こんな言い方はアレですが「言語の本質」なんていう、カッチコチのタイトルなのに、面白いです。

言葉って不思議だなと思って、それについて思いを馳せてみたことがある人なら、特に言語学や認知心理学の知識がなくても読めると思います。

僕の関心の領域にとどまり続けながら、推論や実験が展開されていくのが、面白く読めた理由かなと思います。

どんな対象でもそうですが、どのような切り口をとって問題領域とするかは、研究者によって自由に設定できます。だから、言語の本質についての研究も、何をもって言語の本質にアプローチするか、それをどのような場所に設定するかは、研究者によって変わってきます。

本書の設定された場所「オノマトペ、アブダクション(仮説形成)推論」が、僕にとっても興味深い場所だったという感じです。

オノマトペは、ジェスチャーと一般言語との間にあって、「記号接地問題」に対するアプローチになっているというもので、この話は、言語学的には画期的だと思いますが、普通にそうだよね、という感じで読めます。

アブダクション(仮説形成)推論というのは、演繹推論と帰納推論に追加される推論で、本書から引用する(208-209ページ)と3つの違いはこんな感じです。


演繹
1この袋の豆はすべて白い(規則)
2これらの豆はこの袋の豆である(事例)
3ゆえに、これらの豆は白い(結果)

帰納
1これらの豆はこの袋の豆である(事例)
2これらの豆は白い(結果)
3ゆえに、この袋の豆はすべて白い(観察からの一般規則の導出)

アブダクション
1この袋の豆はすべて白い(規則)
2これらの豆は白い(結果)
3ゆえに、これらの豆はこの袋から取り出した豆である(結果の由来を導出)

このうち、演繹推論だけが、つねに正しい答えを導きます。しかし、演繹推論は新たな知識を創造しません。帰納推論とアブダクション推論は間違うことがありますが、新たな知識を創造します。

人間が言葉を獲得し、より高度に使えるのようになるには、帰納推論とアブダクション推論の混合が鍵になっている、という話です。




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