起きる前、夢を見ていた。
大きな洋風の屋敷に居る。そこの主人らしき人と一緒に書斎にいる。初老の山崎という名前の大学教授の男で、非常に理知的な感じがするしゃべり方をする。ほっそりとしていて、日本人というよりは白人にも見える感じがする彫りの深い顔をしている。
山崎の専門は、詩、文学、哲学といった分野で、批評を書いたり、自分でも作品を発表したりしている。最近やったといって、何かの映像を見せてくれる。どこかのホールを使ったもので、誌の朗読とダンスと音楽が組み合わさったようなもので、僕はそれに見入る。終わると山崎がどうだったと感想を求める。僕はどうにか何かを言葉にしなくてはと思い、
「背景には積み上げられた構築的な景色が、前景には跳躍と躍動感があります」
という。自分でもうまく言えている感じはしないが、山崎はそれでもまずまず満足したようすでいる。
そして、僕はこの山崎の何かに関する評論を雑誌で読んだことを思い出す。その雑誌にはたしか僕の何か、イベントか何かの告知も出していて、それでその雑誌を読んだ。その署名で山崎という名前だと知っている。
人物と名前と書いた文章などが一致して、僕が「あぁ」と声を上げると、山崎も
「そう、それだが」
と頷く。
いつの間にか時間が来ているらしく、
「あぁ、まただ。あれを君とかき混ぜようと思っていたのに」
と残念そうにしている。
あれ、というのは僕にも思い当たって、山崎の作品か何か、今後のプロジェクトで、それに対して、僕のやっていること、考えていることなどを聞かせてほしい。できれば一緒にやりたいと山崎は思っている。「かき混ぜる」というのは山崎の用語でディスカッションするというような意味合いだ。
僕と山崎は何度か会っているようで、僕もそのプロジェクトには興味があるが、果たして自分の力がそれに役立つのかどうかは不安がある。
そう思いながら、広い屋敷の中を山崎に案内されながら、出口に向かっているところで目が覚めた。全体的に時代感のある、映画的な雰囲気が漂っていた。