December 28, 2020

【770】ヘーゲルの「美学」


買ってしまった。こんな本、新本で買うとは思わなかった。


吉本隆明が「芸術と疎外」という講演でこの本のことを話している。正確にはこの本ではなくヘーゲルの『美学』として発行されている本だけど。

そもそもヘーゲルは「美学」という本は書いていなくて、講義として「美学」をやっていて、その受講者の筆記録をもとに何冊も「美学」はつくられている。この『美学講義』はその中でも初期の講義の筆記録をもとにしているものらしく、特徴としては編者の「歪曲」が少ないらしい。

ともかく、吉本が講演でも話している「自己疎外」について書かれている、はず。

これは芸術の場合で言うと、「自己疎外」という概念を最初に編み出したのはヘーゲルだと思うんですが、ヘーゲルは要するに、人間のある精神の作用があると、人間が精神の作用を行うと途端に、その精神の作用自体の中に、精神の作用をする人間を取り除けてしまう、枠から外してしまうという要素が必ず出てくるというような意味で、「自己疎外」という概念を使っています。(ほぼ日刊イトイ新聞、吉本隆明の183の講演「芸術と疎外」) 

人間が何かをしたとき、その途端、その何かがその人間を取り除けてしまう。人間が何かを表現したとき、その表現をした途端、その表現自体が表現をした人間を取り除けてしまう。こういう問題について書かれている。

今、ゼミで読んでいる吉本の『言語にとって美とはなにか』ももちろん、この自己疎外の問題は関連している。吉本は自己疎外に対して、自己表出を見出している。

『美学講義』分厚い本で、読むのが楽しみ。


===============
■近々開催のまるネコ堂の催し
===============

●リクエスト開催:文章筋トレ
「やってみたい」というリクエストによって日程を決めていきます。
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_26.html


●月一回(単発参加可能):『言語にとって美とはなにか』ゼミ(全13回)
大谷美緒主催
https://marunekodosemi.blogspot.com/2020/07/34.html

●文章面談
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_20.html

●雑誌『言語7』(在庫僅か)
https://gengoweb.jimdofree.com/


December 23, 2020

【769】文章筋トレをリクエスト開催に変更します。次回は1月6日です。

 2021年1月から文章筋トレの日程をやってみたいという方の希望日程での開催に変更します。

「興味はあるけれど日程が合わない」という声を度々頂いていたことと、土曜日は保育の事情が平日とは違って実施の負荷が高く定期での開催継続は難しいためです。
(リクエストでの検討日程は平日と土曜日のどちらも含めますので土曜日でリクエストしたいという場合も大丈夫です。)

やること自体は変更ありません。
1回3時間で参加費は一人3,000円です。
リクエストいただいた方も参加費は同額です。

現時点でリクエスト頂いていて開催が決定している日程は、

2021年1月6日(水)13時30分-16時30分

です。

追加があれば文章筋トレのページで随時更新していきます。
【リクエスト開催】文章筋トレ


December 19, 2020

【768】言葉の表出冬合宿2020、五日目。

五日目の夜。明日の正午に文章提出。明後日はレビュー。

面白い文章を書きたい。

とだけ考えて合宿に臨んだ。最初から合宿中に書き上げられるとは思っていなかったので、とにかく書き始めたいと思っていた。

漠然としたイメージとしてあるのは、文章を書くことそのものが面白い過程として成立していく様が読み取れる文章で、そういうことがやりたかった。これぐらいのイメージでどうにかなるものか、どうなのか、それ自体もよくわからなかった。

勝算はなかったけれど、やってみればどうにかなると思っていたが、どうやらどうにもならなかった。全く書かなかったわけではないが、イメージしていたようにはなっていない。

やってみてよかったと思っているが、これでよかったとは思っていない。

明日の正午が締め切りなのだから、まだやりようがあるだろうと、これまでなら思ったかもしれないが、明日は日曜日でアラタがいる。これは流石に無理だということは、経験上、よくわかっている。無理にやるとアラタの機嫌が悪くなって、いつもできることすらできなくなる。生活が破綻する。アラタと一緒のときはアラタのことをやるのが最も良く、それ以外は悪い。

今夜の残ったこれからの数時間は、できるだけ課題がクリアに出るように、失敗がはっきりするように、文章に手を入れることにする。手技で取り繕っているところは捨てる。


●月一回(単発参加可能):『言語にとって美とはなにか』ゼミ(全13回)
大谷美緒主催
https://marunekodosemi.blogspot.com/2020/07/34.html

●文章面談
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_20.html

●雑誌『言語7』(在庫僅か)
https://gengoweb.jimdofree.com/

December 16, 2020

【767】言葉の表出冬合宿2020、二日目。

  昨日から言葉の表出冬合宿2020が始まる。

 合宿はこれで10回目らしい。5年前の2015年夏に言葉の表出合宿の前身となるフリーキャンプをやっている。そういうことをオープニングミーティングで主催の美緒が話してくれた。

 自分でなにかをやろうと思うとき僕は大体そうなのだけど、これは絶対おもしろいからみんなも絶対面白がるはずだと思っている。5年前のフリーキャンプもそうだった。結果は、惨憺たる物で、僕以外の主催者二人が途中で精神的にダウンする羽目になった。何をしてもいい。どこにいてもいい。いつ来ても、いつかえってもいい。連絡すら必要ない。誰がいつやってくるかわからない、何をしだすかわからない、そんな状況を「運営」することに大きな精神的負荷がかかるとは、僕は予想していなかった。まるっきり逆のことを考えていたからだ。このやり方なら、準備も計画も必要なく、やりたいことはなんだってできると。

 281時間に及んだフリーキャンプは途中で企画としてはほとんど崩壊して、僕だけが取り残されたように一人楽しんでいた。かなり寂しい経験だった。その寂しさは子供の頃から慣れ親しんでいたそれだった。

 寂しいけれど、今となっては貴重なことだ。今となっては、多くの人に、それをやっていてよかったという印象を与えるだろうと思うが、当時はそうではなかった。

 こういうことと書くことは僕の中で重なり合っている。

 今、どうであれ、それを書いておく。それは後になっても読むことができる。

 合宿の初日は初日の雰囲気があって、それが僕は好きだ。何かが始まっているけれど、まだほんの少し空気が変わったようなじんわりしたものに過ぎない。残ってしまった残務を先に片付けながら、少しずつ特別な何かが形をとっていこうとしているのを見ている。

 合宿の二日目は二日目の雰囲気があって、それが僕は好きだ。そろそろ戻れないところまで来ている。港は見えるけれど、小さくなっている。湾の腕から逃れていく。左手あたりに見えている灯台が、背後に移っていく。

 毎日少しずつ変わる月のように合宿は進む。


===============
■近々開催のまるネコ堂の催し
===============

●定期:文章筋トレ
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_26.html


●月一回(単発参加可能):『言語にとって美とはなにか』ゼミ(全13回)
大谷美緒主催
https://marunekodosemi.blogspot.com/2020/07/34.html

●文章面談
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_20.html

●雑誌『言語7』(在庫僅か)
https://gengoweb.jimdofree.com/


December 9, 2020

【766】「エチカ」をゆっくり進める。

 ゆっくり読んでいる。どれぐらいゆっくりかというと一日一行とかそういうレベル。

 本来のタイトルである「幾何学的秩序に従って論証されたエチカ」にあるように、記述は「幾何学的」である。例えば三角形を僕たちはかんたんに思い浮かべることができるが、定義しようとすれば、「三角形は、同一直線上にない3点と、それらを結ぶ3つの線分からなる多角形。(ウィキペディア「三角形」)」といった感じになるように、まず語句の定義から始まっていく。 

第一部
定義一
自己原因とは、その本質が存在を含むもの、あるいはその本性が存在するとしか考えられないもの、と解する。

 語句の定義というのは世界の土台の構築だから、この語句の並びによって世界ができあがっていく。

 「自己原因」というちょっと変わった語句から始まっている。でも実は、他の「本質」や「存在」「本性」も「考えられないもの」も僕が知っている語句ではあるけれど、「自己原因」と同じぐらいの不明感がある。どういうつもりで「本質」なのか、どういうふうに「本質」なのか。「考える」とはどういうことなのか。少しずつ消化していく。

 たぶん、そんなに複雑なことを言っているわけではないはずだ。

 「ただ在るとしか言いようのないそれのことをそれ自体の原因があると言おう」

 〈強酸性〉の日本語に溶かし込んでしまえばたぶんこんな程度だと思う。こういう意味のことを、そういうふうに記述するということに、意味以上の意味がある。

 ナメクジのように読む。楽しい。


===============
■近々開催のまるネコ堂の催し
===============

●定期:文章筋トレ
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_26.html


●月一回(単発参加可能):『言語にとって美とはなにか』ゼミ(全13回)
大谷美緒主催
https://marunekodosemi.blogspot.com/2020/07/34.html

●文章面談
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_20.html

●雑誌『言語7』(在庫僅か)
https://gengoweb.jimdofree.com/


December 3, 2020

【765】12月2日の文章筋トレ。

初参加の友人とカエルさん、美緒の四人でやる。10分と60分。

僕なりに少し、やってみたいと思っていたことを進める。出来上がった文章のことというよりは、出来上がっていく文章を楽しむようなことをやってみている。

出来上がってしまえば、いろいろとやってみたその痕跡は消える、のだろうか。

たぶん、何をやったかというところまではたどることができないほどに判別不能になるのだろうけれど、何かをやった、というような形跡は残るのではないだろうかと思う。

何をやったのかはわからないが、何かをやったという。

なかなかおもしろかったので、続けてみることにしよう。


===============
■近々開催のまるネコ堂の催し
===============

●12月15日から21日:言葉の表出、冬合宿2020
https://mio-aqui.blogspot.com/2020/05/2020.html

●定期:文章筋トレ
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_26.html

●月一回(単発参加可能):『言語にとって美とはなにか』ゼミ(全13回)
大谷美緒主催
https://marunekodosemi.blogspot.com/2020/07/34.html

●マンツーマンの文章面談
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_20.html

●雑誌『言語7』発行
https://gengoweb.jimdofree.com/