January 18, 2021

【773】習慣というものの悪さ。

 習慣というものは一般に良いものとされている。運動の習慣。勉強の習慣。歯磨きの習慣。

 そういう習慣の良さはよくわかるけれど、習慣というものによって損なわれていくもの、いわば習慣の「悪さ」があるようにも思う。

 これは例えば飲酒の習慣や喫煙の習慣といったような、その習慣の内容によって決まる「悪さ」のことではなく、内容的に良いとされている習慣であっても必ず生じている、習慣というものそのものが内包している「悪さ」のことだ。習慣というものの本質が「悪く」作用している面とでも言えばいいだろうか。

 なかなか名指しすることが難しいので、同じ言葉の繰り返しになってしまうのだけれど、習慣にすることによって損なわれている何かがあるように僕にはどうしても思えるのだ。

 文章を書くことを「習慣でやっている」人の文章と、文章を書くことを「習慣としてはやっていない」人の書く文章とで、何かが違っているようにも思える。これは文章を書く量の問題ではなく、書くということそのものの本質的な問題のように思う。

 もちろんこれは文章に限らない。料理にしろ、絵にしろ、人付き合いにしろ、商売にしろ、そうだ。

 たぶん僕が言っている習慣の「悪さ」というのは、一般に習慣の「良さ」と言われているものと同じもので、その反対面のようなものだろう。習慣化することによって何かを得るというプロセスで同時に何かが失われているというイメージでもある。

 ヘーゲルはそれを自己疎外と呼んだ、ということが、今年読もうと思っているヘーゲルの『美学講義』には書いてあるのだろうか。


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