そのあとを読んでいくとそのうれしさを追いかけるように焦りが出てくる。すでに、こんなにも鮮やかに文字にできていることに嫉妬が交じる。そして改めて「読み明かす」なんていうとても素敵な言葉まで掲げていることに、もうくやしい。
一冊目の本を選ぶ動機に「この本以外にすることは可能だったけど、そうゆうわけにはいかなかった」とある。「そうゆうわけにはいかなかった」確からしさというのはどこにも紐付けられていない。こうだから確かという「こうだから」がない。それを支えているのは確からしさがただあるということ。未だ無いことを決めるというのはそういうことだ。可能性という無限の無から、何かがただ出来(しゅったい)する。
この根拠がない、なんの頼りもない確からしさによって決めることが、それまで存在しなかった世界へ自分を押し出していくことを僕たちは知っている。世界が「あける」。
アロー(中川馨さん)とはまこー(濵田恒太朗さん)に僕たちが何かしらの影響を与えたのだとしたら、それは僕たちが僕たちの確からしさを確かだと思っていることだ。
何かがはじまるとき、それまでのすべてによって支えられてほんの少しだけ「あける」。ほんの少しだけれど紛れもなくそれは一つの世界である。こうして二人の何かがはじまるのだなと思う。
中川馨、濵田恒太朗「読み明かす会」