January 5, 2017

【382】無題

言葉の表出、冬合宿2016」で僕が書いた文章です。
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大谷 隆

もうこれでおしまい。たったいま書き終わった。書き終わる直前は息が止まっていて、とてもくるしいからもうこれ以上無理だと思う。けれどまだ書き終わっていないから終わらないと思っている。息の根が止まらないとと思う。息ができなくてくるしいのに息の根が止まることを望んでいる。のは困る。といっても息を止めていることなんて思ってもみないのだから困っていることも思ってもみない。だってまだ息が続くと思っている。まだまだ続くと思っている。まだまだ何もできていない。まだまだだからこれからと思って途方にくれている。なにしろ先なんて見えていないし、存在すらしていないのだから、どこへ行こうにも一寸先すら無い。ただこれまで歩いてきたあとが後ろにはある。でもそんなものはなにもなっていやしないのじゃないか。間違ったところへ来てしまった。でも間違うも何も何もなかったんじゃないか。最初は。そもそもはただ空っぽだった。白紙の紙の束になにも無い。まだ一文字すら書いていない。なにからはじめようか。なんでもはじめられる。なにもはじまっていないことの前にはすべてがある。こんなにいっぱい。山ほど。抱えきれない。ダラダラとあふれこぼれ落ちているたっぷりから。


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