高校卒業まで関西にいたわけで、僕も一応関西人の端くれだから、どうしても「ノリ」や「勢い」というものに頼ってしまうことがあった。いや、たぶん、今もある。
しかし、この年になってつくづく思うのは、ノリや勢いで「乗り切ってしまう」ことの恐ろしさだ。乗り切れてしまえば満足する、そういう安心感の反復に日常が侵食されてしまうことだ。
ノリや勢いで乗り切っていくだけでは到底なしえないなにかは確かにあって、むしろ例えば表現の世界のようなところで名を成すようなことをしている人は、ノリや勢いとは無縁の在り方を継続している。一見するとそうは見えないかもしれないが。
若いころはどうしてもノリや勢いを重視しがちだし、ノリや勢いがないことに悩んだりもするけれど、ノリや勢いだけではどうにもならないことがこの世にはたくさんあって、特に、あなたにとって本当に大切なことや一生をかけて保ち続けていくことは、ノリや勢いではどうにもならないところにあるのだということは早めに知っておいたほうがいい。