吉本隆明『定本 言語にとって美とはなにかⅠ・Ⅱ』【思想・哲学】
独自の文学理論とその実践の面白さを絶妙な日本語で楽しめます。この本を読んでからぐっと読める本が広がりました。鷲掴みにするような引用の凄さは真似したくてもなかなかできません。吉本と言えば、断然これです。網野善彦『増補 無縁・公界・楽』【思想・歴史】
「人はどこかの共同体に所属しなければならないのか。それ以外に生きていくすべはないのか」そんなことを考えていたときに、この本に出会ってほんとに助かった心地がしました。絆や縁とは異なるもう一つの原理を史料から精緻に浮かび上がらせていきます。マルティン・ハイデッガー『形而上学入門』【哲学】
すすめられたって読みませんよね。普通。でも面白いですよ。ゴトンゴトンと正確にレンガを積み上げていくような文体なのですが、読み慣れてくるとハイデガーの熱血ぶりが浸入してきて高揚感が出てきます。「うわ、やばい、これ」と思いながら陶酔します。ちなみに「入門」の意味は、ここから形而上学が始まる門といったような意味で、初心者でもわかりやすいなんてことはまったくありません。何度も投げ出しながら読みましょう。保坂和志『カンバセイション・ピース』【小説】
保坂さんは小説論三部作も面白いのですが、やっぱり実作というか、小説らしい小説ということで、これを。もう一冊挙げるなら『未明の闘争』です。保坂さんの小説は、読んでいるうちに、どうかしちゃいます。いろいろ考え出して、ウロウロ歩き回って、読み進められなくなって、でもまた読みたくて、という不思議なループに入ります。「面白くて一気に読みました」なんてことは全く起こらないのですが、それが面白い。夏目漱石『明暗』【小説】
読んでるだけで胃が痛くなるという僕にとっては体に悪い本なのですが、それを上回ってやっぱり面白いです。うまいです。さすが漱石先生。未完なのですが、そんなことは気にせず読み始めて良いです。太宰治『斜陽』【小説】
没落貴族の若いお嬢さんの視点に冒頭からいきなり封じ込められます。男性作家が女性の語り口で書くという、ある意味ものすごくファンタジック(というか変態)な状況なのですが、これが得も言われぬ読書体験を引き起こします。妙な気分になります。もう、うまいとしか言いようがない。男性読者におすすめです。ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』【小説】
ジョイスは『ユリシーズ』を挙げるのが正統なのでしょうけれど、僕にとって衝撃だったのは実はこっちです。到底読み通せる本ではないのですが、こんな本を実際に書いた人がいて、それなりに評価されていて、翻訳した人までいるというのが文学の異常事態というか、いやむしろ逆に文学の文学らしいところなんだと思います。図書館で探してパラパラやってみてください。なんと文庫になっている!
ミヒャエル・エンデ『モモ』【児童文学・小説】
小泉今日子さんがおすすめしていたので高校生の僕が買った本です。当時は児童文学なんて興味なかったんですが、いや、モモいいよね、ほんと。『はてしない物語』もいいのですが、やっぱりモモという一人の女の子の魅力が勝ります。古い単行本の訳のほうが好きです。「スピード料理の店」ですから。
ジョージ・オーウェル『一九八四年』【小説】
ディストピア小説で面白いのは幾つかありますが、中でもやっぱりこれが一番好きです。言葉というものそのものを題材にして、物語としてここまで面白くできるとは。言葉好き小説好きとしては憧れの境地です。全部男性著者になってしまった。
※2018/05/19現在。随時更新していきます。