December 1, 2015

【247】二葉亭四迷『浮雲』を読んで思う

なんだあこりゃあ落語じゃないか。言文一致の金字塔。文学近代これにてはじまり、逍遥うなった天才の、四角四面の文学史、ここにありやと教えた者は、いったいどこのヘボ教師。ダジャレの利いた節回し、調子のいいコトこの上ない。オチでつなぐ章立てに、声を立てて笑い出す。さぁさ、文三とお勢の恋路、その行方は如何にぃ。



さてはさては二葉亭、こんなあはずじゃあなかったと、途中で筆を投げ出して、あぁあ失意のハルビンへ。ところが時は許すまじ。捨てさる紙を拾う紙。その名を朝日というなれば、いやいやながらマス埋める。其の面影や見る影も、ペテルブルクへ夢を追い、とうとう船上肺病で、息絶えてから百余年。志良し心根良し。今こそここに、蘇らん。新たなる文体を。新たなる表現を。今こそここに、突き出さん。

僕はお政は昇はお勢は、そして文三は好きで好きで。彼に書かれてよかったと思うんだ。




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