August 12, 2020

【734】8月11日の夢。

 ちょっとややこしい夢を見た。面白い夢だった。書き残しておこうと思う。

 僕の実在の友人がほぼ当人そのものとして登場する。仮にSとしておく。Sと二人で話をしている。薄暗い居酒屋のような飲み屋のカウンター席だ。Sが今度イベントをやるという。場所を借りて二日間のイベントらしい。映画の上映会かライブ?のようだ。その会場のイメージは、僕が昔、何度か足を運んだり自分でも上映会や音楽ライブのイベントをやったことがある中崎町の古い建物に重なる。

 どんなイベントなのかをSはその場で案内文をメールしてくれる。僕はそれをざっと読む。本来は二日間のイベントなのだけど、何らかの理由(コロナ?悪天候?)で開催できなかった場合には、一日に短縮して別企画をやることになっている。こちらの企画は軽めの企画になっていて、トークショーらしい。テーマ的には同じで、規模を縮小した企画だ。トークするのはSで、どんな内容を話すのか、その触りの部分をYouTubeにアップしてある。案内文にURLがある。僕はそのYouTube動画を見る。内容は思い出せないが、僕の興味にも合う面白そうなことを話している。僕はなにかコメントしたくなって、その場で、Sにメールを書く。すぐそばにS本人がいるのに直接話さずにメールしている理由はよくわからない。それに対してSからの返信が来る。そうして、メールで何度かやりとりをする。かなり充実した内容のやり取りで、いろいろと考えることができて有意義だ。ただ、なにかちょっとした違和感も感じている。相手はSなのにSではないように思うことが何度かある。メールのやり取りが一段落したときに、隣にいるSに、どうしてちょっとSじゃないような感じの返事をするのかと尋ねる。

 「えっ?」とSが答える。
 「え、じゃなくて、なんかS、変じゃない?」というようなことを僕が言う。
 「それ、誰にメールしてますか?」とS。
 「えっ?」僕は血の気が引く。

 慌ててアドレスを確認するとSのアドレスではない。僕はSだと思って別人とやり取りしていた。しかも、おそらく会ったことがない人だ。もう一度、Sの案内をきちんと読み直す。その人物はSとは別の人で、ゲストとしてそのトークショーに登壇することになっている。大学の先生か研究者かそういった感じの人だ。

 しかし、YouTubeの動画はSに見える。正確に言えば、Sがその手の人のコスプレをしているように見える。髭がSと違う。別人と言われると別人にも思える。

 ともかく、僕は大変失礼なことをしてしまったと、慌てて謝罪のメールを送る。Sだと思って冗談を交えたかなりラフな書き方をしていたからだ。すると、隣のSが、

 「でも、それ僕なんですけどね」と言う。

 僕は、どういうことかと問う。

 「だから、それも僕です」とSは平然と言う。

 本当に焦っていた僕は、とても安心したと同時にSに「本当に焦ったよ」というようなことを強い調子で言う。正直かなりムカついていたが、しばらく話をしているうちにそのムカつきも収まってくる。そして、Sと別れる。

 店から出てしばらく一人で夜の道を歩いているとSからメッセージが来る。

 「さっきは騙してしまってごめんなさい。本気にすると思わなかったので」というような内容だ。

 このあたりで僕は目が覚める。このあたりというのは、目が覚めたあとも引き続き夢の中にいる感じで、このことをシームレスに考え続けていた。夢と現実の境があとからでは思い出せない。いつ目が覚めたのか判断できない。Sのメッセージが、夢の中で届いたのか、目が覚めてからそれが届いたかのように思ったのか、わからない。もし、目が覚めてからだとしたら、それは夢よりももっと直接的な僕の願望としてメッセージを欲しがっていたということだろう。いずれにせよ、僕は、何にムカついていたのかをSのメッセージに返信するつもりで、次のように考えた。目が覚めてからだ。

 騙されていたことにムカついているかというと、必ずしもそうではない。そういう面もあるにはあるけれど、むしろ本心は別にある。僕は、ある人に対して、別人だと思いこんでメールのやり取りをした。肩書的にしっかり書いてあったかどうかはわからないが、大学の先生なのか研究者か、そういった人だということになっている。その人に対して、僕は、そういった見かけはデタラメで、よく知っている友人だと思って、対応をした。だからもし、夢の中のSが僕の友人だと言うだけでなく、実際にそういった研究活動をしているのだとしたら、Sが謝る必要はない。僕の友人が、別の名前で別の活動をしているということはあり得るし、そうだとしたら、僕は何も「騙されて」いないからだ。同一人物であるかどうかは、僕の観点ではそれほど重大なことではない。むしろ問題は、その人が持っているだろう専門性や知識、知性といったものへの敬意を僕が欠いていたことだ。肩書の有無の問題でもない。一人二役だろうが、ちょっと冗談まじりの軽いノリの企画であろうが、イベントでトークショーをやろうと言うぐらいなのだから、それなりの関心や、それについて考えたり思ったりしたことを持ち合わせているはずだ。そういうものへの敬意が僕には欠けていた。事実、メールでのやり取りは充実していて有意義だった。そのことについて多くの熱量が投下されていなければ、有意義なやり取りにはならなかっただろう。たくさん考えていたからそうなった。トークショーのテーマに関して、僕がメールしていた相手には十分に専門性があったのだ。最初からそのつもりでやり取りをしていれば僕は焦ることはなかった。それが友人であろうと別人であろうと。僕は、僕の失礼さにムカついていた。Sへのムカつきがあるとしたら、僕が焦っているのを横目に見ながら「平然としていた」ということぐらいだ。

 面白い夢だと思ったので、布団の中で一度内容をできるだけ思い起こした。そうしているうちに目が冴えてきたので、これは残しておこうとパソコンを開いてここまで入力した。入力した内容を読むと、僕のムカつきに過剰に焦点があたってしまっているが、思い返すとそれほどのムカつきではなかった。それよりも全体に僕はとても楽しく過ごしていたし、今でも楽しい。久しぶりに薄暗い居酒屋に行けた。そこで二人で話をしていた。今は2020年8月11日の午前2時17分だ。



===============
■近々開催のまるネコ堂の催し
===============

●12月15日から21日:言葉の表出、冬合宿2020
https://mio-aqui.blogspot.com/2020/05/2020.html

●定期:文章筋トレ
隔週の水曜午前、月一回の土曜午後
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_26.html

●月一回:『言語にとって美とはなにか』ゼミ(全13回)
大谷美緒主催
https://marunekodosemi.blogspot.com/2020/07/34.html

●まるネコ堂芸術祭・出展者募集
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_84.html

●9月まで月一回:『中動態の世界』ゼミ(全9回)
https://marunekodosemi.blogspot.com/2019/12/32.html

●マンツーマンの文章面談
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_20.html

●雑誌『言語7』発行
https://gengoweb.jimdofree.com/


Share: