僕の仕事に「文章面談」というのがあります。「書くことと読むことが面白くなる個人面談」という言い方をしていますが、もう少し説明をしてみようと思います。
一般に「文章教室」や「作文指導」では、書いた文章を添削したり、ここはこう書くと意味が伝わるという提案や指導をしますが、僕の文章面談ではほとんどやりません。
では何をやっているかというと、レビューという言い方をしていますが「あなたが書いた文章は、このような姿をしています」というのを書き手に返すことをメインにやっています。レビューを含めた書き手とのやり取りの中で、書くこと自体を面白くしていこうということをやっています。
レビューについてもう少し詳しく言えば、「明るい」とか「傾いている」とか「高い視点から見えている」とか「雲の中のような場所にいる」といったような、文章が読み手にもたらしている「総合的な出来事」を述べていきます。
なぜこういうことをやるのかといえば、文章の良し悪しという基準は、それほど単純なものではないと思うからです。文章の面白さというのは、わかりやすさやインパクトだけではなく、もっと根本的な書き手の世界の捉え方自体が、読み手に迫ってくるものだと僕は思っています。
自分でもなんだかうまくいえないけれど、とても大切に感じたり、なにか核心に少しだけでも触れたと思ったりするような、おぼろげな体験の雰囲気をなんとかして書いたものを、「わかりやすかった」「情景が鮮やかに思い浮かんだ」というふうに簡単に読み取られることは、必ずしも「うまく書けた」ことにならないと思います。
自分が表したかった何かをどのように読者に生じさせるかという問題は、意味の伝達の適切さや、構築されるイメージの鮮明さといった明瞭な指標によってだけで評価されるようなものではありません。
自分が書いた文章の姿がどのようだったのかを返すことで、書き手は、それならばこうしてみようとか、ああしてみようとか、自分で判断することができるようになります。試すことができるようになります。それ以前に、自分がそんな風に世界を捉えていたのかということを改めて知ることは、自分が生きていく上での下支えになります。
面談のゴールは「文章を自分で書いていくこと自体が面白くなるようにする」というのを一応の目標に置いています。書くということを通して、自分自身が変化していって、この世界の捉え方自体も変わっていくような状況です。書くことそれ自体から書くことの面白さを汲み出すことができる状況です。
自分の文章の可能性を広げたり、文章を生き生きとさせたいと思っている方はもちろん、書くことに対して漠然とした興味があって、心の何処かで書いてみたいなと思っているのだけど、どうすればよいのかわからないというような方にもおすすめしています。