September 17, 2014

【言葉の記録2】小林健司さん 第5回

第5回 沖縄の名もない無人島で25年間暮らしてる爺ちゃん 

小林:
この前テレビで、沖縄の名もない無人島で25年間暮らしてる
爺ちゃんみたいなのがいて、
すっぱだかでずっとくらしてんの。

台風とか来てもテントを木にくくりつけて。

大谷:
テントでくらしてんの?

小林:
うん。テントだった。じっと中で耐えてね。
で、また落ち着いたら魚獲ったり、雨水溜めて水作ったり。
それ、なんでやってるかって、テレビのクルーがきいたら、
人間関係がとことん嫌になって、
ここなら誰とも関わらなくて生きていけるからって選んだって。

大谷:
あぁ、うん。

小林:
そこまでいくと完璧にピラミッドから外れてるじゃんか。
でもそこまでやんなきゃだめで。
しかもそこまでやったにもかかわらず、
ある日、その人75歳とかそれぐらいなんだけど、
60歳ぐらいの人が噂を聞きつけて隣の島に来たんだって。
でもう、最初は絶対やめてくれって言って、
人間関係嫌でここに来たのに、
ここで人間関係に悩まされたら最悪だと。

大谷:
せっかく一人なのに。

小林:
で、ずっと拒否してたんだけど、その来た人も食い下がって、
隣の島に住んでるんだよね。
干潮になると島がつながって渡れるぐらいの距離。

大谷:
一応、渡れるんだ。

小林:
でもさあ、面白いなと思って。
なんかテレビで見てる限りはさ、
もともといた25年住んでる爺ちゃんも
まんざらでもない感じなんだよね。

隣に来た人が何もわかってないからさ、
台風の時どうしたんですかって、
その新しく来た人に聞くと、
いやちょっと近くの島で避難してました、
って全然軟弱なの。

大谷:
(笑)

小林:
で、それを報告しに行ったら、お前また逃げたのか、
そんなんだからいつまでたってもダメなんだって怒ってるんだけど、
ちょっと弟子と師匠みたいな感じでさ。
ま、そりゃそうだよなと思って。
人が久々にきて、しかも一緒に自分に憧れているとか、
そりゃうれしいよな。
なんかそんなのを思ったりして、
網野善彦は関係性の中で人間ていうのは生きている生物だから、
そもそも関係性がありきなんだみたいなことを言ってるけど、
ほんとにそうだなと思って。

網野善彦:1928年生まれ。日本史家。
専攻は日本中世史、日本海民史。非農業民や海民など漂泊民のいきいきとした力強い暮らしの様子を膨大な史料を丹念に読み解くことで浮かび上がらせた。著書『無縁・公界・楽』など。

小林:
で、ピラミッドの話でいうと、どんなに外れようと思っても、
そこにまで来るわけよ今。
アフリカの奥地とかアマゾンの奥地の部族ですら、もう無理で、
そのピラミッドと切り離した生活っていうのは、
絶対どっかで影響受けるから、
ピラミッド本体の直接の影響じゃなくても。
そことどう折り合いつけて生きてくかみたいなことが、
重要な、そこ考えないと無理な状況。

それ事実だから、最近はそこにどう触れに行くかとか、
どうやったら自分が傷まずにそのピラミッドの中に入って、
こう体を痛めたり怪我をしなかったりできるのかとか。

大谷:
うんうん。

小林:
前、フェンスワークスで話してた時は、
ピラミッドのことをメインストリーム、
本流に喩えてたんだけど、
下手に手をバンって突っ込むとすごい持ってかれて、
全身ずぶ濡れになる。

恐れてちゃぷんてつけるだけだったら
全然潤わなかったりする。
だから、出来るだけ接触の仕方、技術を身につけて、
ちゃんと自分が潤いたい分だけ潤って離れる。
そういう考え方になってきた感じがあるかな。

大谷:
そうか川の流れか。
けんちゃんも似たようなことを考えるんだな。
でも譬えが違うんだな。

小林:
技術を身につけたからって、
それでもアマゾンで稼げばアマゾンを潤わすっていう事実に
変わりはないっていうか、
そのピラミッドに加担している事実自体は変わらないんだけど、
その構造自体を見た上で
自分がやるかどうかはまた別の話だなと思って。

【言葉の記録2】小林健司さん 第4回

(まるネコ堂ウェブサイトからの再掲)

第4回  家とピラミッド

大谷:
最近僕がよく考えているのが、
僕の家がこのへんにこうあるでしょ。
で、このへんにピラミッドがあってさ、
これ、経済社会っていうピラミッド。
           
家とピラミッド(お金を中心とした経済の社会)。作図:大谷
大谷:
家から歩いて、ててててって、
ピラミッドに入るとお金がもらえるねん。
で、持って帰ってくる。

家ではそんなにお金は使わないから、
ちょっとずつ使って、なくなったらまたピラミッドへ行く。

ピラミッドの中のルールってめっちゃわかりやすくて、
何をすればお金をもらえるかって、すごい明確で、
何をすればピラミッドの頂点へ行けるかも明確で、
下の人がいて、上の人がいて、だんだん上に行くの。

お金をもらえるところって、
こういうピラミッドの中の感じがして、
でも僕は普段は家にいるから、
この経済社会のルールが
適用されていない感じがするなあって。

あ、そろそろお金なくなってきたからピラミッド行くわ、
みたいな。

いったん中に入ると家での生活のルールは全く適用できない。
NPOもピラミッドの中に、僕の中では分類されている。

小林:
完全にそうだと思うね。
活動を始めたのはもしかしたらピラミッドのすぐ横とかね。
ちょっと脇ぐらいなのかもしれないというか、
多くのNPOの場合はそうだと思うんだけどね。

大谷:
取り込まれちゃう。

小林:
なぜ、その脇でスタートしたかって言うと、
そのピラミッドによっていろいろ、
周りの土地が枯れたり水がなくなったりするから、
そういうのを解決しようと思って、
そこでやりはじめるわけでしょ。

でもそれを解決するのにもお金がいるから、
ピラミッドの中に入るのが一番お金得るのは早いよね。
だから、進んでその中に入るんだけど、
よりそれで水が枯れたりする。

加担してくことになるね。

大谷:
ピラミッドの中にいる人は、
ピラミッドの中しか世界がないと思ってるフシがある。
ピラミッドから出ちゃった人は、
もう世の中から外れたように見えている。そう感じてるんじゃないかなと思う。

小林:
そうだとするととんでもなくでかいピラミッドだけどね。

で、ちょっと前までというか、むしろつい最近はか。
加担する感じが僕、どうしても嫌でさ、
持ちたくなかったんだよ。
だから例えば、アマゾンで稼ごうと思ったら、
アマゾンのピラミッドを強化することになるじゃん。
僕が月50万円得ようが、100万円得ようがね。

なんだけど、このへん難しいな。なんていうんだろ。
もうそのピラミッドの広がりスピードたるや、
とんでもないものでさ。

【言葉の記録2】小林健司さん 第3回

第3回  大事とか大切って、ちょっと所有してる感じがある

大谷:
そういう話で言うとよく思うことがあって、
人が資源とか、人材とかそういう言葉って、
いい意味で使われるでしょ。
でも、ちょっと嫌だなと思って。
資源なんだよ、僕、誰かの。
石油みたいな。

都合のいい存在なんやなっていう感じがしてきて。

小林:
言うよね。財産の財、書いて人財とかね。

大谷:
他人なのにね。
「けんちゃんは僕の人財です」って、変だよね。

小林:
ほんとだね。
所有してる感じなのかな。

大谷:
そんな感じがする。

小林:
大事とか大切って、ちょっと所有してる感じ、
あるんだよね。
これは僕の大切な物ですとか、
大事な物ですとか。

丁寧にこれを扱いたいとかっていう場合は、
所有してるものかもしれないけど、
所有しててもちょっと距離感がある。

大谷:
ほんとだね。

小林:
丁寧に関わりたいって言う場合って、
あんまりピッタリ来る英語ってないんだけど、
いろいろずらっと並べていくと、
リスペクトフル(respectful)とか使う場合がある。
敬意を持つ。礼儀正しい様子とかね。
だから余計、丁寧っていうのはしっくりくるなと思って。

大谷:
うん。

小林:
組織、といっても、
僕はNPOでしか勤めたことないけど、
「いったい、だれがこれやりたいねん?」みたいな、
誰もやりたくなくて、
みんな嫌がってる仕事があったりした。

ミッションがこうで、
このためにこういう事業計画があって、
具体的にはこういうタスクがあって、
で、これやる人は?
って言った途端、
「いやいや、どうぞどうぞ」って感じで、
誰もやりたがらない(笑)
なんじゃそりゃって感じだよね。

大谷:
なんじゃそりゃだね。

小林:
だれがこれ、やりたいんだよ!?と思って。
みんな自分がやりたくないっていうのには
触れずに話を進めて、
最後だけビジネス的な考え方にシフトする。
「そんなのモチベーションがどうとか、
やりたいとかやりたくないとかじゃなくて、
やらなきゃいけないことなんだからやるのが仕事だ。
それがプロだ。」って。

でもそれ、ズレてるよね。

大谷:
うん。

小林:
NPOだと特にそのズレがわかりやすい。
企業のほうが、そういう意味では
ズレが出にくいんだと思うね。
あんたお金もらうんだから、
やんなきゃいけないでしょ、
それプロだからって。

給料もらう人も、
お金のためにしてるんだから納得してやってるわけで、
すごい整合性のある話だと思うんだけど、
NPOというか、社会のためにとかミッションを掲げて、
全員がそれに賛同して仕事をしています
っていう組織でそれやると
ちょっとズレてきやすくなると思うんだよね。
プロだからやってるのかな?その人達は。
ミッションに共感するからって
組織の一員として迎えられ、
そのつもりで入って、
でも給料をもらうためには、
嫌だと思っても、違うと思っても、
やるべきことを遂行するためのプロ意識を求められるし、
それを当然だと思って頑張る。

採用する方も、組織に入る人も、
嫌な仕事は嫌、とか何のためにやってるのか分かりません、
ってことが明確に認識できてれば、
そこから話ができていくし、
さっきの企業の話と同じで整合性は高くなる気がするけど、
それすら見ないで単にプロだからって進めていくのは、
僕はちょっと矛盾している感じがあると思うんだけどなあ。

【言葉の記録2】小林健司さん 第2回

第2回  丁寧に生きたい人たちが集まるところだった

大谷:
今、なんて言ったっけ? ちゃんと自分の・・・

小林:
自分のままで生きる。

大谷:
どういうイメージなの?

小林:
これはね、最近フェンスワークスの中でも話してて、
丁寧に生きる、みたいな。
丁寧に生きたい人たちが集まるところだった、
みたいなことを言っていて。

フェンスワークス:目的を持たない生命体的集団。大阪の千代崎に拠点を持つ。円坐やエンカウンターグループなどを数多く開催。代表は田中聡氏。2014年より小林夫妻も所属。

大谷:
フェンスワークスが? 

小林:
フェンスワークスがね。
僕もそうだなぁと思って。
丁寧に生きられないもんね、組織にいたら。
組織が先にあるからね。
自分がそこに合わせないといけないし、
どんだけこれは違うだろ、と思っても、
組織としてそれをやるべきだとなったら、
それしないといけない。

違うという僕をないことにして、やるべきことをしていく、
というのは僕にとってそれは丁寧じゃない気がする。

丁寧って、中国の戦がある時代にね、
敵が来るのを知らせる楽器だったんだって。

大谷:
丁寧っていう? へー

小林:
丁寧っていう。
それが丁寧っていう名前だったから、
よく注意してみるとか、
そういうことを丁寧っていうようになった。
そこから転じて、
大事とか大切なものも今は含まれる
ニュアンスで使ってるんだけど。

で、大切は大きく迫ること。
切迫していること。
もうすごく距離が近くって、
分かちがたい関係にあるものを大切。

なので、自分に近いよね。

大谷:
うんうん。

小林:
考えてみりゃあ、僕が円坐とかミニカンとかやってるのも、
丁寧に聞くとか、丁寧に人といるっていうことを
したいからやってると言ってもそんなにずれた感じはしないし。
僕が丁寧さを捨てなきゃいっしょにいられないような環境とか、
そういう人とは、わざわざ一緒にいようとできなくなってる。

別にその人が丁寧に生きたくなくて、
勝手にしてんのはいいんだけど、僕は違うので。

円坐:人が集まり、ただ円になって座る時間と場のこと。
テーマなく言葉が出てくる。非構成エンカウンターグループとも。

ミニカン:ミニカウンセリングの略。
15分間、話し手の話を聞き手が聞き、それを録音し状況音も含めて逐語録を作成。それをもとに15分間に何が起こっていたのかをレビューする。

【言葉の記録2】小林健司さん 第1回

言葉の記録

人と話をするのが面白い。どこがどう面白いかというのは、その人、その時それぞれだから、ひとくくりにはできない。話、離し、放された言葉が少し景色を変えてみせる。そんな言葉の記録。事と場の記録。

小林けんじさんの「自分では、自分の考えてることを文字にするのが難しいから人に聞いてもらいたい」という言葉から生まれた企画。

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