August 20, 2015

【222】僕の原爆。(6)

シリーズ「僕の原爆。」 目次 【158】僕の原爆。 【201】僕の原爆。(2) 【216】僕の原爆。(3) 【217】僕の原爆。(4) 【221】僕の原爆。(5) === 椅子は限界まで並べられていて、会場の後ろ側から前側へと通路を歩きながら、その通路に対して横方向に並んでいる椅子の列のどこかに座ることになる。通路は狭く人一人分しかなく、人が行き交うことも大変で、椅子の前後もぎりぎりなので、すでに座っている人の向こう側に行こうとすると、座っている人が小さくなってもその膝と摺り合い、片足ごとに体のバランスをとりながら歩かないと行けない。だから必然的に通路を前へ進もうとする列はなかなか前に進まない。一般席の前に遺族席があるようなのだけど、それがどこのあたりなのかもよくわからない。とにかく、座れればいいと、それほど前へ進まずに、会場の後ろ近くで座ってしまう。もともと遺族席に座れる資格やそれの証明のようなものを僕は持ち合わせていない。会場のメインとなる場所は遠くてよく見えないが、見えることで何かが変わるという気もそれほどしない。それよりも早く座って自分の場所を確保したい。...

【221】僕の原爆。(5)

シリーズ「僕の原爆。」 目次 【158】僕の原爆。 【201】僕の原爆。(2) 【216】僕の原爆。(3) 【217】僕の原爆。(4) === 原爆ドームの横を過ぎて橋をわたる頃からだろうか、低音の体に響く管楽器の音が聞こえる。橋を渡ると平和公園になる。音は少し早足に歩くぐらいのテンポでブォ、ブォ、ブォ、ブォと単調なリズムで、その上に美しい旋律のようなものが乗っかっていない。あるいは旋律というものがあるのかもしれないけれど、あったとしてもおそらくは高音で繊細で、遠くここまでは辿り着かない。あとで近くまで行って知るのだけれど、それはやはりメロディのようなものが極めて希薄で、ただただ重厚さを単調に積み重ねるだけのような音だ。荘厳さという便利な言葉があって、それを思い浮かべては、そうではないという気持ちがしてきて、僕が荘厳さを拒否する。ただ暗く重くたち込めている。しかし、リズムは足を前へ前へと運ぶように刻まれていて、このまま何処かへ連れて行かれるから、それはどこかと思い巡らす。足元に積み重なる低音が体全体を乗せてベルトコンベアーのように、どこかへ僕は行ってしまう。...

August 19, 2015

【220】フリーキャンプが終わって。

そもそも何かが始まったりしていたのかという気がする。終わったという以上は始まっていた。フリーキャンプが終わって、今だ。 最初からあったことが、覚えてはいるけれど、それがいつあったのかは、今となっては分離できずただ、まだら模様の巨大な団子のように、あの人やあの人やあの人やあの人たちやあの人やあの人がいる。 出来事というのは、何か独立して、他からは浮き上がるように、あるということになっているけれど、本当のところ図と地の区別はなく、図と...

August 17, 2015

【219】押し回し理論。

けんちゃんと話している中で出てきたことだけど、本当に何かをしようとするときには「押し回し」が必要だ。 ガスコンロに火をつける時にレバーを押して回すように、ライターの火をつける時にドラムを回してから舌状の部分を押すように、2つのことを同時にやる。 昔、ある年齢ぐらいまでの幼児は、この2つのことを同時にやるというのができなくて、それができるようになった時に、一歩「大人」に近づくという話を聞いたのをずっと印象深く僕は覚えていて、でも今は...

August 14, 2015

【218】フリーキャンプの途中で。

何が起こるかわからない。がフリーキャンプだ。 何が起こるかわからない。 というのの「が」は、僕が食べた。 というときの「が」で、「僕」の意思をも含むものなのだけれど、 その意志の主体であるのがフリーキャンプの場合は、 「何」であって、 それが「起こる」、「か」が「わからない」。 「何が起こるかわからない」という文章を「私が」読むとき、暗黙のうちに、 私が、何が起こるかわからない。 という風に、 自分を設定して、 自分にとっての...

August 9, 2015

【217】僕の原爆。(4)

シリーズ「僕の原爆。」 目次 【158】僕の原爆。 【201】僕の原爆。(2) 【216】僕の原爆。(3) === 宛てにしていたお好み焼き屋が、まさか15時までの営業だとわかって、二人して驚いた。よっぽど美味しいのだろう。7時間ほど電車に乗り続けて来たからもう、だからといって次の候補を調べたり考えたりする余力はなくて、宛もなくふらふらと明るいほうへ歩いて行って、適当な店に入ってお好み焼きを食べた。お好み焼きというのは僕らの知っているお好み焼きではないお好み焼きで、それを広島焼きと言ったりするのは間違いだ。言葉というのはそういうふうに多重に使うことができる。  ...

August 4, 2015

【216】僕の原爆。(3)

シリーズ「僕の原爆。」 目次 【158】僕の原爆。 【201】僕の原爆。(2) === 数日前に電話をして、7月23日に奈良の叔母のマンションへ行く。部屋に入り、まずはと仏壇に線香を上げる。叔母の夫が使っていたものだろうか、医療用のベッドが隣の部屋に置いてある。ちょうど叔母の孫娘、つまり僕の従兄弟の娘が来ていて、一人で静かに本を読んでいる。僕にとって従兄弟はこの子の父親の僕と同い年の一人だけで、つまり、僕の母は一人っ子で僕の父は妹が一人だけいて、その妹がこのマンションに住む叔母で、その叔母夫婦の子供は一人っ子である。...

August 3, 2015

【215】「書生」生活5日目その2と6日目。

苦手な夏を楽しむための思いつき、 僕の勝手なイメージの中の「書生」生活をやってみます。 ■目次 思いついた時のエントリー 【200】「書生」をやってみる。 やってみてからのエントリー 【207】「書生」生活1日目。 【208】「書生」生活1日目その2。 【209】「書生」生活1日目その3。 【210】「書生」生活2日目。 【211】「書生」生活2日目その2。 【212】「書生」生活3日目。 【213】「書生」生活4日目。 【214】「書生」生活5日目。 【215】「書生」生活5日目その2と6日目。 === 結局また東山の和室に戻ってきたのは夜中だった。しかも3人で、けんちゃんとぱーちゃんと一緒にフレスコで買い込んだ焼酎とともに。クリップの扇風機は床に転がしてドアの外に向けて換気扇代わりにした。窓からわずかに冷気が流れ込んでくる。けんちゃんが買ったぶどうが一番先に出てきた。しばらく間を置いて、僕の買ったトマトが出てきた。最後はぱーちゃんの買った味噌汁だった。それぞれが一番のタイミングだった。こんなものなんであるんだというようなものが活躍する時は代用が効かない。...

August 2, 2015

【214】「書生」生活5日目。

苦手な夏を楽しむための思いつき、 僕の勝手なイメージの中の「書生」生活をやってみます。 ■目次 思いついた時のエントリー 【200】「書生」をやってみる。 やってみてからのエントリー 【207】「書生」生活1日目。 【208】「書生」生活1日目その2。 【209】「書生」生活1日目その3。 【210】「書生」生活2日目。 【211】「書生」生活2日目その2。 【212】「書生」生活3日目。 【213】「書生」生活4日目。 === 日に日に目が覚める時間が早くなっていて6時だ。しばらくぼっーとしている。木魚のようなアフリカンの太鼓のような目覚まし時計のような音楽音(おんがくおん)が聴こえてきて隣の隣の部屋だ。ドアが開いていて、こちらもドアが開いているからよく聴こえる。短いフレーズのしつこいリピートが続き、2、3回ほどパターンが変わり、その後ひとしきり盛り上がって途切れる。終わったのかなと思っていると、また最初からはじまる。繰り返す。繰り返す。繰り返す。4回。5回。...

August 1, 2015

【213】「書生」生活4日目。

苦手な夏を楽しむための思いつき、 僕の勝手なイメージの中の「書生」生活をやってみます。 ■目次 思いついた時のエントリー 【200】「書生」をやってみる。 やってみてからのエントリー 【207】「書生」生活1日目。 【208】「書生」生活1日目その2。 【209】「書生」生活1日目その3。 【210】「書生」生活2日目。 【211】「書生」生活2日目その2。 【212】「書生」生活3日目。 === 銭湯へ行くつもりだったのが昨日は行かなかったので今日はむっきーと銭湯へ行くつもりだ。夕方4時ごろにと約束しておいてある。それが昼過ぎに電話がかかってきてお昼食べに行きません、というのですでにおにぎりを幾つか食べたといいながら食べに行くと答える。昨日と一緒で三条大橋を待ち合わせる。昼過ぎという時間帯で特に今日は日差しが強い。河原を歩くと巨大なプレス機で天と地の両方から熱の塊に押しつぶされている気分になる。ふくらはぎのあたりでジリジリと熱を感じる。息も絶え絶えで三条通につくと何食べますかと言われても未来を構想することはできず、過去を近いところからどうにか参照していく。昨日と同じ中華屋である。...

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