這い這いはまだで、移動は高速でずり這いする。
乳児は発達の中で、いろいろなことが段階的にできるようになっていくが、そのなかでもこのずり這いが、僕は一番かっこいいと思う。両手と両足を器用に使って、まるでトカゲのように進む。特に脚の動きがいい。片足ずつ交互に曲げて、つま先がお尻のすぐ下にまで来るように持ってきて、親指と人差し指の根元あたりで地面を蹴りながら、それに合わせて、腕を交互に前に出して進む。
このときに体がくねくねと曲がるのが良い。進んでいく後ろから声を掛けると動きを止めて体を捻って首をこちらに向けるのも良い。そこから、片足を突っ張るように伸ばして、お腹を中心にぐるりとコンパスの針が回るように水平に滑らせて、体の向きを変えるのも良い。
でも、最近、膝を立てて、腕も突っ張って、四つん這いで腕を前に一歩二歩と出すようになった。這い這いだ。今はまだ、脚を垂直にして、お尻を上げて保っておくことができないが、そのうちそれができるようになっていけば、這い這いが完成する。そうなれば、もう、ずり這いをすることはなくなってしまう。
ずり這いよりも這い這いのほうが、できるようになってしまえば、断然楽だからだ。試してみればすぐにわかるが、二足歩行に慣れてしまった大人には、ずり這いは相当にきつい。きついけれど、広い部屋なんかでやるとなかなか迫力があって、宴会芸には良いかもしれない。
ともかく、もうすぐ見れなくなる。
まさに今が、最も完成された、美しく力強いずり這いである。