腐敗の温床、とか、悪の温床とか言う、あの温床(おんしょう)のことを考えている。生暖かくじめじめして、触るとぐにゅっとしたり、カビ臭いところのことだ。
温 床(おんしょう)
1 堆肥の発酵熱などで温かくして、苗の発育を促進する苗床。
2 主として悪いとされる物事が発生して育ちやすい環境のこと。巣窟。
・悪の温床。腐敗の温床
このウィクショナリーの「主として悪いとされる物事が発生して育ちやすい環境」というくだり、とてもわかり易くてなぜか笑えてきてしまう。
ある作品を観て、なにか、自分の中で蠢くようなものがあるとき、どうしてもそこから離れがたい気分になって、しつこく作品を観ることになる。そのうち、自分を支えている土台がぐにゅっと沈み込んで、体勢が揺らぐ。視界が傾く。それまで知っていた自分や世界が柔らかくなって変形する。
そういう時に、面白いものを観たと僕は思っていると思う。
自分や自分を取り巻く世界が変状して、それまでには無かった物事が生まれて育っていきそうな気分がいい。
こういうのを表すのにちょうどいい言葉だと思うのが温床。温かく適度に湿った柔らかなところ。無意識的な企てに満ちた場所。
なぜか「主として悪いとされる物事」にだけ偏ってしまって使われている。字面だけをみると心地よさそうなのに。
僕は温床に居たい。
アトリエとか工房とかというと、設備や道具が揃っている感じがあり、さらに、良い印象を与えてくれる明るさや健全さや生産性があって、それはそれでいいのだけど、温床のヌメッとした生あたたかさや湿っぽさや出来ちゃう感もいい。
第5回まるネコ堂芸術祭開催まで、あと57日。
芸術祭のサイトもできました。