半年ほど「下書き」に残っていたエントリー。
そこそこ面白く最後まで読めたので公開してみる。
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とある作家のとある短編小説についてラスト近くで挿入されるエピソードがいまいちしっくりこない、どういうことか読んでみてください、と一冊の文庫本を手渡された。
この作家については実は個人的にあまり好ましくない過去があって、ただしそれはこの作家のせいではない。僕に文庫本を手渡した友人のせいでももちろんない。全く無関係だ。単に僕の個人的な過去だ。とはいえ、そんなこともあって、この作家は、以前はあまり好きではなかったし、読みたいとも思わなかった。
最近はさすがに僕も成長し、少しは大人になったので、好きでも嫌いでもなく読むことができるようになった。好きでも嫌いでもないのに読むというフレーズに重大な意味があるような気がしながらも、僕はその作品を読んだ。
一度読んで、大きく二つのことが印象に残った。一つは、おそらくこの作品に限らない、この作家のもつ文体に起因するものだ。もう一つは、おそらくはこの作品に限った、つまり、この作品を特徴づけることだ。
二回目を読んだ。一度目で印象に残った点について確認するように読んだ。
一つ目の、おそらくこの作家のもつ文体に起因する印象については一度目の印象と変わらなかった。そして、もう一つの方に、驚いた。
この作品をこの作家は、あるパラメータを基準にして構成したはずだ。そのパラメータの示す値によって作品中の善悪の感覚が決定されるように書かれている。これはきっとそうだ。そのパラメータが作品全体に渡って注意深くコントロールされている。それについてメモも取っておいた。
今度、文庫本を手渡した友人にあったらそのことを話そう。面白がってくれればいいが。
さて、一つ懸念が残る。
今回に限ったことではないが、最近本を読むということが、これに似たような経緯というか、依頼されて読んだり、要するに、必要にかられて読むことになってきている。以前のように、本屋の棚を横になぞっていきながら、初見でタイトルを見た瞬間に、あぁこれだとろくに中も開かずに興奮しながらレジへ持っていって、その日は寝ずに読む、というような読み方をもう何年もしていない。
僕にとって本を読むことは、僕が最もたくさん本を読んでいた中学生の頃の読み方から大きく離れたところまでやってきた。それが良いことなのか悪いことなのかはわからない。少なくとも、もう、僕にとって本を読むことは以前の僕のとは明らかに違ってしまっている。
好きで読む。没頭して読む。そういう読み方を僕はもう殆どしていない。これは悲しむべきことなのだろうか。悲しむべきことではあるだろうが、だからといってもう、戻ることはできそうにない。
たぶん、今はまた、踏ん張りどころなのだ。新しくなってしまった僕の読むことが、僕にとって祝福されたものであるかどうかは、これからの僕の専権事項で、以前の僕には判断できない。
読むことは広大な海である。思えば長い航海だ。僕の船は気が付かないうちに相当にガタが来ているのかもしれない。母港へ帰還して検査を受け修理をするときなのかもしれない。さて、母港はどこだったか。僕の読むことの原体験はなんだったか。
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