理想的な自分を書くことと現実的な自分を書くことをシーソーの両端にとる。文章筋トレに際して、予め書くことを考えておくことは僕はしていない。だから、この一文もその時に考えて書き出した。のだけど、そのときにこの一文が表していることを考えたわけではない。伝わりにくい文章になっているのは承知しているが、こういう内容のことを以前からずっと「考えて」いたけれど、一昨日の朝の10時過ぎ、何か書こうとして「考えて」この言葉を書いたのだ。前者の「考えて」と後者の「考えて」は違っている。こういうときに後者の「考えて」を「考えないで」と言い換える人がいることも知っているが、僕自身はそう思えないので「考えて」書いていると表す。
で、全く別の文脈から、昨日、僕は吉本隆明の教育に関する言葉を検索して、ほぼ日の「日本のこども」という糸井重里との対談を見つけた。驚いた。
帰するところ、最も重要なことは何かといったら、僕は過去にこの記事を読んだのだろうか。読んでいたかもしれない。おそらくは読んでいたのだろう。しかし、この吉本隆明の言葉は記憶にはなかった。ないつもりだった。だから、僕は、一昨日、
自分と、
自分が理想と考えてる自分との、
その間の問答です。
理想的な自分を書くことと現実的な自分を書くことをシーソーの両端にとる。と書いたのだ。 もし覚えていたらこういう書き方はしなかったはずだ。書くとしたら吉本の言葉として書いたはずだし、うろ覚えならうろ覚えだとわかるように書く。
吉本隆明に関してはこういうことが頻発する。僕が長い時間かけて考えてきて、ようやく言葉らしいものになったなと思ったら、とっくに吉本が書いたり話したりしている。お釈迦様の掌か。
吉本隆明の言葉はこのあとしっかりと、
「外」じゃないですよ。と続く。先生だったら、生徒とのコミュニケーションなんてやってないで、自分と自分の理想との問答をやりなさい。それを子供はちゃんとわかるんですよ。という話。もちろん子供だけでなく大人もわかっているわけで。
つまり、人とのコミュニケーションじゃ
ないんです。
でまぁ、こう言われてしまうとクリアになってしまうのだけれど、僕からみて面白い人だなと思う人は、結局この「自分と、自分が理想と考えてる自分とのその間の問答」をたくさんやっている雰囲気を持っている人だ。そういう人の言葉はたとえ少なくてもありふれていても一言一言がもう面白い。逆に内的な問答をたいしてやっていない雰囲気の人の言葉は、見かけ上どんなに「深み」がありそうな言葉が選ばれていても、どんなに興味を引きそうな言葉が使われていても、その場限りだ。自分、つまり現実の自分にとどまり続けてひたすら「外」とコミュニケートしようとし続けている「反応する機械」なだけなのだから、その場限りなのは必然だ。僕自身も「機械」の時があって、そういう時の虚しい祝祭気分は独特の後味の悪さがあったのだけど、その理由もこれでクリアになってしまった。
とまあ、またしても吉本隆明にしてやられたという話。ほんとにいつ読んでも吉本はドキドキする。
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