バンヴェニストは哲学者じゃないけど。 |
ノートを録りながらする読書が好きだ。単に気になった箇所をそのまま書き写しているだけで、特に、要点をまとめたり、自分の意見を書き込んだりはしない。これがなぜか楽しい。哲学書を読むときが一番ノートを録る。むしろ哲学書を読むのはノートを録りたいがため、かもしれない。
読んでいて、あ!っと思ったところがあると、そこを書き写す。あ!っと思っているぐらいだから、本当はそのまま読み進めたい。先が知りたい。でも、次のパラグラフへ移っていきそうになる視線をぐっとこらえてペンをとる。それが良い。こらえきれずに視線が先へと進んでしまって、ちょっと一息ついたところで、ページを戻ってきて、さっき、あ!っと思ったところを見つけ出して書き写すのも良い。
後者はちょっと冒険気分になる。未踏の大地を進みすぎてひょっとしたら迷子になるかもと思いながらビクビク進むあの感じ。これはなにかに似てるなといつも思っていたのだけど、あぁあれだ。ウィザードリィで1マス1マス、マッピングしながら進んでた、あれだ。
ウィザードリィというのは大昔のパソコンのゲームで、恐ろしく簡素なワイヤーフレーム画面の3Dロールプレイングゲームだ。真っ黒な画面に白い線が何本か走っているだけなのだけど、遊んでいるうちにその線が迷宮の壁に見えてくる。あまりに単純な画面でなんの目印もないから、油断するとすぐに迷ってしまう。迷うと地上に戻ってこれない。だから地図が必須だ。初めて降りてきた階なんかは、文字通り一歩進むたびに左右を確認して、方眼紙に壁を書き込んでいく。いちいち手間がかかる。本当はどんどん進んでみたい。でもそれをするとあっけなく全滅する。全滅したら新しいパーティーを組んで死体を回収しに来ないといけない。だからぐっと我慢して、鉛筆を握る。プレイ時間がものすごくかかる。
そうして作った自分の地図を頼りに迷宮を歩き回れるようになっていくのが楽しい。哲学書を書き写すのもそれと同じだ。一冊の本は広大な未踏の世界。少しずつ自分なりの地図を作って、何度も立ち止まり、振り返り、行きつ戻りつしながら世界を把握していく。
すでに本に書いてある文章をそのまま書き写してなんになるのか? という疑問は確かにあるけれど、これは予めゲームデザイナーがセッティングしたマップデータをゲームをプレイしながら書き写していく行為が一体何になるのか? という疑問と同じなのだ。そうすることで、本やゲームの世界を自由に歩けるようになる。そうしなければ、歩けない。そうすることがゲームをプレイすることであり、そうすることが本の世界を旅することだ。ゲームのマップなら攻略本を買えば間違いのない地図が手に入るから大幅に手間は省けてしまえるが、哲学書の攻略本はあまり当てにならないという違いがあるぐらい。
自分で地図を作っていきさえすれば、どんな世界だって旅することができる。ものすごく手間がかかるけれど、その手間を楽しめるとしたら怖いものはない。地図は少しずつしか出来上がっていかないし、とてもじれったい。その上、自分なりのものでしかなくて「公式マップ」ではないから、地図があっても時々道迷いをしてしまう。でもそういうことの隅々に面白さが満ち溢れている。
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