人が全身で書いた文章を読むのは本当にゾクゾクする。気の利いた言い回しや面白い切り口、わかりやすい言葉、なんてものをすべてうっちゃって、そういう小手先の技で届く範囲を遥かに超えてただ歩いて行く。一文字一文字の文字それ自体によってその文を一から構築していくような文章は素晴らしい。
それがすでに著名な人の本であっても、その思考を一文字一文字追うように読むのはとてもスリリングだ。しかしもっともっと面白いのは、自分のすぐ近くでその思考を今まさに一歩一歩進めていっている最中の人の文とともにあることで、編集という仕事の醍醐味はここにある。
何か巨大な生き物がゆっくりといっときも休むことなくどこかを這っている。誰もいない荒れ地に、その巨体を引きずった跡が長く地面にひかれていく。それがそのまま本になる。
そろそろはじめる。