長くライターをやっていて、完全な禁忌だったのが、誤解を招きかねない文章。必ず直しが入るし、そもそもそういう書き方をしようという動機もなかった。でも、今文章を書くとしたら、誤解を招いてもいいんじゃないかと思い始めている。
この文章自体が誤解を招きかねないのだけれど、でも現にそういうふうに思うのだったらそういうふうに書くしかない。
伝わる文章という領域は確かに確固とした乾いた大地だ。でも時々洪水で土砂が流れこんでぬかるむような土地もある。そういうところでしか書けないようなことだってある。
乾いた大地は快適で、ぬかるんだ大地は不快だから、ぬかるんだ文章を読むと不快に感じるには当然だと思う。
誤解を招かないようにするためには、慎重に乾いた部分を選んで足を踏み出すしかなくて、島のような乾いたところだけを踏んで歩くことになる。
でも、僕の感じるある気分というのは、そういうまだらな大地自体にあって、乾いているところだけを踏んで歩いているからといって、そこらへん一帯が乾いているわけではなくて、やっぱりぬかるんでいるのだとしたら、ぬかるんでいるところも歩かないとと思う。
ずっとそういうことばかり書きたいわけでもないけれど、そういうことを書いても構わない。今もそうで、やっぱりドキドキはするのだけど。