小さなものよりも大きなものから手を付けるというのはコストダウンの鉄則だと思う。生きていくための金銭的経費も、大きなものから手を付けるのが良い。
現代生活において最も高い経費を計上している費目は趣味である。趣味を経費削減すればいい。のだけど、なかなかそうならない。
必死に働いたんだから趣味ぐらい金を使いたい。いやむしろ、趣味で使う金を稼ぐために働いている、というわけだ。
しかし、困難なことこそ報酬は大きいし、困難なことこそ抜本的に根治的に対策を取ることができる。対策は大きい方が自由度が増える。
経費削減だなどとケチくさいレベルではうまくいかない。いっそ趣味を自給すればいい。趣味を自給するにはどうすればいいかを考えればいい。そもそも趣味だからといって何かを消費しなければならない道理はない。
本を読むのが趣味だという人は、自分で書けばいい。趣味なんだから、自分が面白いと思えばいいだけだ。他人に見せる必要すらない。褒められたり貶されたり、微妙な顔をされることもない。
旅をするのが趣味だという人は、移動を手段と考えるのをやめればいい。移動は手段ではなく、旅そのものである。徒歩でもヒッチハイクでもすればいい。知り合った人の家に泊めてもらえばいい。旅のはじめから終わりまでのあいだに起こることはすべて旅の醍醐味である。危険を伴うかもしれないが、旅が趣味だというからには、危険のない旅など本当の旅ではないとよくよく知っているではないか。
趣味がないという人は、何もしなくてもいい。何もしないのが一番である。どのみち自分の思い通りになることなど、たかが知れている。何もしないでいられるのは自分だけである。興味深いことは向こうから列をなして訪れてくる。それがわかるにようになるまで、何もしなければいい。
生きていくのが趣味だという人は、自分が興味を持った事柄について、常に根本的に考え、試し、確かめていく。これ以上の趣味はない。それこそが趣味のなかの趣味であり、もはや趣味とは言えない超越的趣味である。その視野からはすべてが趣味となり、趣味は自ずと給わる。