March 4, 2020

【617】3月4日の文章筋トレ。

最近はもっぱら手書き。
汚い字と漢字の書けなさを人に目撃されるのにも
すっかり慣れてきた。

今日は水曜午前の文章筋トレ。

カエルさんと美緒と僕の3人。常連かつ人数少なめで、ゆったりウォーミングアップして90分を1本。いずれも読み応えのある文章だった。

カエルさんの報告と筋トレ文章がアップされている。
美緒の感想もアップされた。

文章筋トレは誰でもできる文章の「書き始め方」。誰でもできます。

次回は3月14日(土)午後、その次は3月18日(水)午前。
詳しくは文章筋トレのページをどうぞ。

以下、僕の今日の文章。
原本はノートに手書き。
90分。


身軽さとか気軽さのことを書こう。こういう時は。こういう時というのは、世の中が新型コロナウイルスで騒がしかったり、アラタが一週間インフルエンザで保育園を休んだり、そういう落ち着かない時のことだ。

身軽さとか気軽さは責任というものと関係がある。身軽であることや気軽なことが直接、責任の軽さに結びつくのではない。身軽さと気軽さは責任をくっきりさせる。責任というものを、それをとりまく仕方なさから抜き取って、くっきりとした輪郭を露わにする。骨つき肉の骨だけを取り出したような感じで。

僕たちは普段、特にこれと言った出来事がないとき、骨のまわりに肉をつけるように、責任のまわりに仕方なさをまとわりつかせて、仕方なさで膨らんだ責任を全うしたり、投げ出したりしている。

仕方なさは時と場合に応じて膨らんだりしぼんだりする。仕方ないと思うことを含めて、責任を負う。責任を負えと言われると、仕方なさのフレーバー込みで負う。

それが、いつもと少し違うとき、平時とは言えないとき、骨のまわりの肉が骨のまわりに付いた肉として見えてくる。

身軽になるとか気軽だとか言っていることは、この肉から骨を取り出すことだ。この肉が、骨のまわりに付いていたということを知ることだ。

「子供が元気でさえいてくれれば」とか「体さえ無事ならば」というのは、そのためならよろこんで責任を負うという、仕方なさが取り去られた責任で、単なる願い事ではない。

身軽さや気軽さは無責任なわけではない。普段「責任」と言っているものが、当然のようにまとわりつかせてしまっている仕方なさが取り去られた責任を身軽さや気軽さは負う。だからむしろ、身軽であることや気軽であることの方が、責任そのものの重さは大きくなることがある。仕方なくではなく、責任を負うのだから、大きな責任を負うことができる。

何かの理想を書いているのだろうか。僕は。

身軽さや気軽さのことを考えると、とても甘い誘惑を感じると同時に、背中に大きな穴が空いたような後ろめたさを感じる。目の前に広がるのは暖かで鮮やかな光景。背後に感じるのは、モノトーンの冷ややかな地平。

身軽であったり気軽であったりすることのクリアさが見通しを与えてくれる。与えすぎてくれる。いつもはうつむき加減で地面ばかり見えているのが、地平線まで見えてしまう。

身軽さと気軽さが、そのずっと先には放浪と地続きであること。それがはっきりと見えてしまう。それこそ無責任なのではないか。

本人自身にとってだけ連続した責任の負い方であって、本人以外はその場に置き去りになるのではないか。

寅さんを素直に楽しめないのは、僕の放浪癖のせいで、僕はあんなにうまくやれないに決まっているからだ。釣りバカの方がよっぽどいい。気楽に観て楽しめる。

身軽さと気軽さと責任と放浪は僕の中で近いところに位置していて、ある場所を浮き上がらせている。寂しさや愛情、友情、かけがえのなさもそのあたりにある。

ノートとペンと着替えと手ぬぐいとをリュックにつめて、人がそこそこ居るけれど誰も僕に関心を持たないようなところへ、せいぜい2、3日いれば、僕の気はすんでしまう。

本当はもっと重大なことのはずなのに。身軽さや気軽さを取り違えている。

本当はもっと重大な身軽さや気軽さなのだ。重大さにつりあう身軽さや気軽さ。敵でも味方でもなく戦場を歩き回る身軽さと気軽さ。大きな責任を負うことができる身軽さと気軽さ。

今はこのあたりが限界か。少しずつ霧が晴れてくる。湿度が下がって空気が澄んでくる。このあたりの。



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●3月29日(日):山本明日香レクチャー・コンサート
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隔週の水曜午前、月一土曜午後
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