May 1, 2020

【681】どれだけ独りでふるえていられるかがその人固有の存在力を示している。

不安だったり怯えていたりするときに、どれだけ独りで居られるかがその人固有の存在の重大さを示しているように思える。

不安だったり怯えていたりして「ふるえている」とき、人はその振動をどうにかして抑えようとしてしまう。その時に一番手っ取り早く採用されるのが、他者へ伝播させることだ。

振動を他者へ伝播させることにより自身の振動を減衰させようとする。当然、伝播した他者は振動を始める。この共振を「共感」と呼ぶ。

他者に伝わった振動はさらに別の他者へと伝播していく。そうして集団全体へ行き渡っていく。

このとき、問題になるのが減衰率だ。

振動が他者へと伝播する際にその振動エネルギーのすべてが保存されるわけではなく、減衰する。力学的にはこの減衰はエネルギーの損失として計上される。摩擦熱として失われる。

もし、集団全体(系全体)の減衰率が或る一定以上であれば、集団のどこかで発生した振動はやがて減衰し収束する。社会的状態として見ればこれは平常時の姿だ。

しかし、異常時には集団全体の減衰率は下がっている。或る一定以下まで減衰率が下がれば、一度生じた振動は収束せずにやがて集団全体が発散する。

集団全体の減衰率は、個人の減衰率の総和だ。

自身のふるえを他者に伝播することなく、ただじっと独りでふるえ続け、やがて静かにおさまっていく、その個的な減衰強度の総和だ。

「不安なときは人に話すと落ち着く」というのは集団現象として或る条件下では成り立つが、その条件から外れたとき、他者の不安の逆流というかたちで、より強い共振を促し、やがて系全体が発散する。

個人と集団は異なる様相にある様式ではない。個人と集団とは相互に補完的だ。個人と集団は、切り離すことができる概念ではない。

「落ち着く」という言葉からイメージされる動から静への状態変化のプロセスを自己内部に持っているその度合いに応じて、集団において、その人の存在は力を持つ。

他者へ伝えずにどれだけ独りでふるえて居られるかが、集団から見た、その人の存在の度合いだ。



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