定番とは、ヘビーユーザーほど支持するものである。反復への強靭さであり、常にここにあるものである。
できることならすべてを定番にしたい。それさえあればいいというもので世界を覆い尽くし、閉じてしまいたい。この願いは少しずつ着実に進めることができる。
しかし成就されることはない。無限の彼方に目標点があるからではなく、別の原理によって根こそぎ引き抜かれるからだ。
面白いという観念に定番は存在しない。面白さのヘビーユーザーから支持されるある単一の面白さというものがない。これさえあればいいという面白さは、面白さのヘビーユースを満たさない。面白さとは「常にここに無い」。
言葉に定番は存在しない。言葉のヘビーユーザーから支持されるある単一の言葉というものがない。これさえあればいいという言葉は、言葉のヘビーユースを満たさない。言葉とは「常にここに無い」。
動的な全体性そのものがそれであるようなもの。局所的な出来事が、常に全体を動揺させるような暫定存在網。それがそこにあることによって、それ自体が変質してしまう、そのようなそれである。
局所的なことを局所に留める減衰の快楽がある。それさえあればいいと受け止めることで、それ自身を疎外する。定番世界は、土台の強靭さを誇り、閉じた安寧を快楽視している。
動的な全体性そのものの快楽がある。それによってそれ自体が変わってしまうことで、それ自身を蝕む。暫定世界は、すべてを動員して、開いた好奇を快楽視している。
この二つの世界は折り合わずに同居する。別居できない。