February 7, 2020

【584】何かを肯定することは難しいことではない。

或るものを在るとすることが肯定だ。或るものを無いとすることが否定だ。

それだけなわけで、肯定というものは「高評価や賞賛」といったそれ自体に何かを付加したり装飾したり持ち上げたりすることではない。或るものが在ると思えばそれが肯定だ。あとになってやっぱりそれは無かったと思えば否定すればいい。

よく僕は庭の石を拾っていた。最近はあまりやらないが、一時はよくやった。考え事をしながら、石を二つ三つ拾って、別の場所に置くというだけだ。気が済むまで庭をうろつきながらそれを繰り返す。庭から石を失くしたいというわけではない。石を集めて何かをしたいというわけでもない。本当にただ石を拾って別の場所に置くだけだ。

この石拾いは僕にとっては重要なことで、こうする意味が在る。「こんなことをしても何もならない」とか「なんのためにこんなことをしているのか」といった問は浮かばないというか、何もならないわけがないということは確信していながらそれをやっていた。

つまり、石拾いを肯定していた。この行為の意味をうまく説明するのはなかなか難しいことだが、難しいだけで、このことについて考えていけばやがて説明はつく。そっとそのままにして考えないようにしておいたほうがいいといったナイーブな問題でも、大切にそっとしておきたいといったロマンチックな問題でもない。ただ言語化の難しい、言葉の集まり具合が足りていない領域なだけだ。

今なら「ミニマムな散歩」だと説明するかもしれない。悪くない言い方だ。

一般的な視点から見て利得が無さそうなことをやっていると人はだいたい「なんでこんなことをやっているのか」と問うことになっているらしい。他人に問われるよりも、まず自分自身に問うらしい。しかし、この問いの意味は「一般的な視点から見て利得が無さそうなことをなんでやっているのか」という問いに過ぎないわけで、問いの重点は「一般的な視点から見た利得」にある。だから「一般的な視点から見た利得」なんてものの方が、僕自身の石拾いよりも、実はそもそもよっぽど怪しい存在だと気がつけば、大した問ではない。

利得が好きなら好きでいい。自分にとってどんな利得があるのか、ということを自分で考えていけばいい。その時、まだうまく説明はできないようなことでも、それが確かに在るのだという実感さえあれば、まずはそれを肯定すればいい。後でやっぱり違ったと思ったら否定すればいい。いずれにせよ、考えが進めば、それは自分なりの理屈として組み上がっていく。その理屈が「一般的な視点」からみて果たしてどうなのかは、ずっとずっと向こうの話である。ずっとずっと後の話だ。

常に自分を一般的な視点に晒し続けて、そのもとで判断したり、判断しなかったりすることの問題点は、明らかに「常に自分を一般的な視点に晒し続けて」いることであり、「判断したり、判断しなかったりする」ことではない。



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