February 17, 2020

【595】いちいち考えてできる。いちいち感じてできる。

アラタは毎朝保育園に行く。歩けるようになったので靴を履いて庭を横切って砂利の小径を進んで道路へ出る。このあたりまで10分ぐらいか。

庭の石を拾い、南天の実を採って、別の石を拾い、石を捨てて、フェンスを触り、後戻りして、石を拾い、とやって行く。目に映るものにいちいち反応して、それを確かめていく。

10メートルに10分かかる。

この速度はこの数カ月で飛躍的に上がった。歩けるようになり始めた頃は庭から出ることすら叶わなかった。歩行速度が遅いというより、目につくものが多く、そのたびに立ち止まりしゃがみこんでいた。それがだんだん減っていって、今や庭の石の99.9%は意識にのぼらない。少し前までなら10個に1個は手を伸ばしていた。

僕はとても切なくなる。成長は力強くて切ない。

こうやってアラタは今後も多くのものへの意識をフィルタリングしていく。注意を向けるべきものとそれ以外を選別していく。世界の大半は注意を向ける必要がないということを会得していく。そうして生きていきやすくなっていく。

それが大人になるということだからだ。物事をひとまとめにすることで扱いやすくしていく。「灰色の石、土、赤い石、土、土、大きな石、砂、草、違う草、尖った石、湿った土、背の高い草、木の枝・・・」が「庭」というパッケージに収まっていく。

1 フライパンをコンロにかける。
2 コンロに火をつける。
3 熱くなるまで待つ。
4 油を入れる。
5 玉子を割り入れる。
6 玉子をかき混ぜる。
7 ご飯を入れる。
8 お玉でかき混ぜながら鍋を振る。
9 塩を小さじ半分入れる。
10 刻んだネギを入れる。
11 お玉でかき混ぜながら鍋を降る。
12 皿に盛る。

が、

1 チャーハンを作る。

にまとまるように、僕たちは物事がよりできやすくなるように、パッケージ化していく。パッケージになれば、思考や感覚への負荷は格段に下がる。楽にできるようになる。チャーハンも美味しく作れるようになる。

でも、

「できる」が「考えなくてもできる」や「感じなくてもできる」ようになることを指すのではなく、「いちいち考えてできる」「いちいち感じてできる」ようなことのまま維持し続けることは理想に過ぎないのだろうか。

僕の中では、そういうことが面白さと幸せの近くにある。



===============
■近々開催のまるネコ堂の催し
===============

●3月20日から24日:言葉の表出、春合宿2020
https://mio-aqui.blogspot.com/2020/01/2020.html

●7月28日から8月1日:言葉の表出、夏合宿2020
https://mio-aqui.blogspot.com/2020/01/2020_28.html

●3月29日(日):山本明日香レクチャー・コンサート
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_24.html

●定期:文章筋トレ
隔週の水曜午前、月一土曜午後
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_26.html

●9月まで月一回:『中動態の世界』ゼミ(全9回)
https://marunekodosemi.blogspot.com/2019/12/32.html

●月曜午後のzoomカフェ
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/zoom-httpszoom.html

==============
マンツーマンの文章面談
https://marunekodoblog.blogspot.com/p/blog-page_20.html

「書いてみたいけどなかなか書き出せない、書きあぐねている」
「書いてみたけどこれでいいのか不安」と思う人が多いようです。
この面談では、書くことが面白くて自分で書き進めていけるように
なるまでをサポートします。1回60分から90分程度。
初回ヒアリング無料です。

【費用】
・高校生以上:1回7,000円
・小中学生 :1回5,000円
※出張の場合、出張費1,000円と交通費実費が加わります。

お問い合わせはメールで。
大谷隆 marunekodo@gmail.com


Share: