February 13, 2020

【591】現世と常世。

家ではなく合宿所という仮の宿に棲んでいるのだという意識を拡大すれば容易に「現世は仮の世界で本当の世界は常世だ」といった世界各地の宗教に見られるありふれた世界観になる。「現世」と「常世」という日本神道的な語彙で代表させてはいるけれど他の宗教でもたぶん同じような世界観があるだろう。

帰るべき「家」はそもそもこの世にはない。この世自体が仮に過ぎない。本当の世界は死んだあとに帰るのだから。といったところだろう。

僕にとっての「現世」はとても豊かな世界で、刺激に満ち溢れ、何一つとってもよく見ればそれは確かに何かなのだ、他とは違う独自の存在なのだという強さを持ってしまっている。だから、現世とは異なるもう少し穏やかな世界がこの世界とは違うところにあってもいいのではないかと思うことはできる。

そういう穏やかな世界は、刺激がなく、多くの変化や変異を持たず(バリエーションがなく)、色彩も限られていて、要するにいつも同じだという意味で「常世(とこよ)」と名付けられているとすれば、納得が行く。退屈な世界なのだ。退屈という言葉を肯定的に捉えることができるならばそこは理想郷である。かぐや姫が帰っていく月の世界はきっとそんなところだ。

死後の世界を考えるのはあまり得意ではないし、それほど興味もないのでこのぐらいにしておく。

僕が興味があるのは、現世というか「現代」があまりに刺激に満ち溢れてしまっていて、それが過剰に思えるのであれば、あの世に行かなくても、もう少し穏やかに生きていければいいんじゃないか、そういうことはとても具体的な日々のこととして可能なのではないか、結構快適なんじゃないか、意外に他の人も求めてるんじゃないか、とかそういうことだ。

偽常世風の生活は、キリキリ修行なんかしなくてももっと気軽にやれるんじゃないのかな。


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