新井紀子『AI VS.教科書が読めない子どもたち』が面白かった。
例えば、AIは以下の二文の(構造的な)意味の違いが読み取れない。
・先日、岡山と広島に行ってきた。
・先日、岡田と広島に行ってきた。
(169頁)
また、
・警報機は絶対に分解や改造をしないでください。
・未成年者は絶対に飲酒や喫煙をしないでください。
(125頁)
の構造的な違いが読み取れない。ということは、たぶん、
・ファッションモデルは太らない。
・こんにゃくは太らない。
の違いも読み取れないだろう。
また、AIには以下の二文が同義であるかどうかの判定が難しい。
・幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
・1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
(205頁)
同じ名詞がほぼ同じように並んでいるからほぼ同じ意味の文ということになってしまうようだ。助詞や受動態は無視しているのだろう。
ちなみに、次の( )を埋めるような問題は逆にAIは得意である。
・幕府は、( )年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
こういう場合AIは、「幕府」「ポルトガル人」「追放」「大名」「沿岸」「警備」で検索をかけて、合致度の高い例文を特定し、その文中にある「〇〇年」という該当部分を見つけ出してくるというやり方をする。この場合、助詞や態は無視しても問題ない。
こういった、文章をぶつ切りにして名詞要素を検索キーとして取り扱うだけの「表層的読解(意味理解を伴わない読解)」でも、AIの記憶力と計算力(総当たり的比較力)を持ってすれば8割ぐらいの現役受験生より入試で点が取れてしまう(東大は無理だけど学部学科を選べばMARCH関関同立に合格できるレベル)というのだから、なかなか衝撃的である。
AIは、文章全体の意味を読み取るみたいなこととは全く異なることをやっている。のだけど実は、そもそも人間が文章を読んで意味を理解するということがどういうことなのかは、まだ解明されていない。だからそれを数学的モデルとして取り扱うことなんて夢のまた夢で、今は単に工学的な力技で片っ端から例文と比較して重み付けでやるしかないし、せいぜいその効率的な比較法を開発するか、例文の量を増やして「精度を上げて」いる。
ここから導かれることとして本書は、人間が手に入れる読解力として表層的読解がいくらできても、いずれAIに取って代わられるだろうと予測する。だから、AIが苦手とする「深い読解」...
July 23, 2018
July 19, 2018
【438】ルソー『告白録』読了。この天才駄目人間は魅力的だ。
文庫本3冊。なかなか読み応えがあった。
後半、こんな展開になるとは。序盤の青春青春してたのと全く違う。当たり前といえば当たり前だけど。
しかし、ルソーってこんなにも迫害されていたのか。幾度となく退去命令を出され、転々としていた。そんなにも国家や教会に憎まれていたのか。
ルソーが「自然に帰れ」ということの意味やニュアンスはとてもよくわかった。もともと自然人であるというわけではなく、人づきあいに求める友愛の純度が高すぎて、それ...
July 16, 2018
【437】カラーボックス一個からできるガレージセール。
カラーボックスに不用品を並べるだけのガレージセール。
看板を作って、
棚に値札を貼って、一番上から「1個50円」「1個100円」「1個300円」「1個500円」。
物を入れておく。
代金入れは空き缶。
これで、ぽつぽつ売れる。
夜に散歩している人がいたり、早朝に散歩している人がいたりするので、基本的に24時間営業。メインターゲットは散歩している人。
雨が降ってきたら大急ぎでカラーボックスごと撤去す...
July 15, 2018
【436】Tシャツは夏向きではない。
うすうす感じていたけど、もう確定事項にする。
Tシャツは夏に着るものではない。
上半身のうちの「ここだけはきっちり保温しましょう」という部分をしっかりガードしている。その上、首周りが肌に密着していて風が通らない。
Tシャツの時期は、気温が低いけれど寒いとまではいかない時期。陽射しが心地よく肌に感じられる時期。それでもちゃんと体幹は保温する必要がある時期。
つまり春、秋である。
もう明日からTシャツ着ない。夏の間は着ない。暑い...
July 14, 2018
【435】コミュニケーションは、〈私〉と〈私たち〉の問題。
興味深い記事。
「コミュ力重視」の若者世代はこうして「野党ぎらい」になっていく
この論考から「だから対立が重要なのだ」という方針を取り出したとしても残念ながら、対立は円滑の補完でしかないから、新たな別の円滑が生み出されるだけだろう。
コミュニケーションを「円滑か対立か」という二項対立として捉えるところから矮小化ははじまっている。二項対立はすべて「内部と外部」の問題だと喝破した(と僕は読んだ)デリダを思い出す。ウチかソトか、でしか...
July 13, 2018
【434】音読へ行こう。
音読合宿、近づいてきました。
〈講師〉のけんちゃんのブログから、関連エントリー2つ紹介。
音読合宿のご案内音読とピアノと絵本
音読についてこれだけの文字数で何かを書くということ自体、なかなかできることではないわけです。こういうことは何についても言えるのかもしれなくて、それはつまり、けんちゃんのブログから借用すれば、
齋藤孝さんが昔、「教え力」という本で教師のもっとも根幹をなす力は、それそのものが大好きなのを生徒に見せることだ、と...
July 12, 2018
【433】古川真人「窓」。話法について
せっかく「新潮7月号」を買ったのだから、目当ての『NŌ THEATER』以外の掲載作もぼちぼち読む。古川真人「窓」。
おっ!と思ったのは、「目が見えない兄」の浩とその友人たちが自宅での飲み会をしているときの会話。主人公の弟・稔はそれを少し離れた換気扇の下でタバコを吸いながら聞いている。
「いや、お菓子がそういえば、ここにあったなあ、と思って取ろうとして手を伸ばしたんだけど、もう空だったからさ、あ、もしかしてお酒がこぼれちゃった?」...
July 11, 2018
【432】『NŌ THEATER』の戯曲を読む
ミュンヘン・カンマーシュピーレ『NŌ THEATER』の戯曲が載っているというので新潮7月号を買う。
戯曲はこんなふうに始まる。
舞台は東京の地下鉄のプラットフォーム。
能「六本木」
男(シテ)かつて投資銀行の証券部門で勤務していた男
青年(ワキ)
駅員(アイ)
地謡 駅員と一人二役
青年登場。
青年(次第)
世の中は、僕に対する需要はない。
世の中は、僕に対する需要はない。
暇だけは、だから有り余ってる。
能の形式の現代文を読むというのがなかなか面白いことだ、ということに気がつけただけで大きい。買ってよかった。岡田利規さんは「池澤夏樹=個人編集...
July 10, 2018
【431】阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』を読む
「ものしり宣言!」というコピーで、本を売ろうとした時代があったというのも、もはや神話的事実。
ギリシア神話好きの阿刀田高が、複雑に絡み合った複合的神話をわかりやすく読みやすく紹介してくれている。この手の紹介本は自分では買って読まないが、実家を片付けていたら見つかったので読んでみた。『ギリシア神話を知っていますか』。
古代ギリシアは西洋文化の基礎的地盤で、現代でもあちこちにその断層が現れている。ハイデガーを代表に、西洋哲学を読ん...
July 8, 2018
【430】コンクリートの上の花壇、3年後。
検索流入で意外に多いのが、この記事。
【160】コンクリートの上を直接、畑か花壇にしたい。
久しぶりに読んでみたら結構面白かった。一応続編もある。
【163】コンクリート上の植物。
が、ものすごく中途半端。このあとどうなったのか全くフォローがない。
というわけで、これらの記事から約3年でどう変わったかを、唐突ではあるがお見せする。
まずは1号地。当時。
ブロックで囲ってバランを投げ込んだだけ。花壇というより...
【429】趣味にはお金がかかるのか。趣味の自給を考える。
小さなものよりも大きなものから手を付けるというのはコストダウンの鉄則だと思う。生きていくための金銭的経費も、大きなものから手を付けるのが良い。
現代生活において最も高い経費を計上している費目は趣味である。趣味を経費削減すればいい。のだけど、なかなかそうならない。
必死に働いたんだから趣味ぐらい金を使いたい。いやむしろ、趣味で使う金を稼ぐために働いている、というわけだ。
しかし、困難なことこそ報酬は大きいし、困難なことこそ抜本的に...
July 7, 2018
【428】幽霊と災害とチェルフィッチュ
案の定、昨日観たの『NŌ THEATER』の余韻が続いていて、今のうちになにか書いておきたいという気分になって、フェイスブックにも記事を書いた。ブログにも貼り付けておく。
のだけど、その前に。
今日も雨は降っている。奈良線は運転を見合わせている。フェイスブックでは誰々の「無事が確認されました」と通知が来る。
この状況で演劇を観に行き、その上感想をフェイスブックに掲載するということに対しては、微妙な、いや、かなりの自己規制が働く。ふさわしくないのではないか。顰蹙を買うのではないか。そういうことを考えた。そういうことを考えたことによって、思い出したことがある。災害に関して、ふさわしくない、顰蹙を買うようなセリフがある演劇があった。
他でもないチェルフィッチュの「部屋に流れる時間の旅」で、この演劇は「あの地震」をテーマにしている。感想をブログにも書いていた。
【317】チェルフィッチュ「部屋に流れる時間の旅」をみて。
思っていても言えない。言いにくい。そういう状況で何かを言いやすくするということと演劇は高い親和性がある。むしろそれこそが〈芝居〉という言葉の意味なのだろう。
ついでに、もう一つ、チェルフィッチュの演劇について書いているエントリーがあった。
【035】旅はどこへ行くかではなくて、どれだけ持っていけないかだ。
チェルフィッチュはとても高い確率で僕を刺激する。
以下、今日のフェイスブック投稿。
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昨夜ロームシアター京都のミュンヘン・カンマーシュピーレ『NŌ...
July 6, 2018
【427】相変わらずの「告白録」と岡田利規『NŌ THEATER』
昨夜寝る前は、1時間ほど「告白録(中)」を144ページまで読んだ。青年ルソーの融通のきかない正義感ぶりが発揮されだすのだけれど、
私の天性をうまくえがきあらわしている場合が私の生涯にあるとすれば、つぎに物語ろうとするのがそれである。この書物の目的をあらためてつよく思いおこすならば、その目的をはたすさまたげとなるようないつわりのとりつくろいは、この際断乎としてしりぞけなくてはならないであろう。諸君が誰であろうと、いやしくも一個の人間を知ろうとするならば、どうかがまんしてつぎの二三ページを読んでいただきたい。諸君はジャン-ジャーク・ルソーなるものを、全面的に知るに至るだろう。
私はまるで愛と美の内陣にはいるように、一人の娼婦の部屋にはいったのだ。...
July 5, 2018
【426】雨とルソー「告白録」
一日雨が降っている。
晴耕雨読という言葉の現代的な魅力は、農的な暮らしや知的な暮らしを愛でる妄想的イメージにあるのではなく、「晴れたら耕し、降ったら読む」という漢字の間に潜む「たら」にある。
つまり、予定を変更することができるという選択性と変更しても大きな問題が起きないという冗長性である。「雪が降ろうが槍が降ろうがやらなくてはならない」というブラックさに対置される、余裕のある余白的ホワイトさ、これである。
そのときになって決めれ...
July 4, 2018
【425】読書日記開始。ルソー「告白録」
来月から「本好きが本の話をする時間・定期」をやるので、備忘録的に読書日記をつけてみる。本好きと言いながらどれぐらい読んでいるのだろう。たいして読んでないことが発覚するかもしれない。
今日の昼間は、インタビューの文字起こしをするつもりだったのだが湿度が高くてなかなかやる気が出ず、ぐだぐだウェブをうろついていたら盛大な手抜き方法を発見。
音声認識を使った「文字起こしの自動化」を3つの方法で試して比較! 夢の「寝て起きたらテ...
July 3, 2018
【催し】本好きが本の話をする時間・定期(第一金曜夜)
【閉会のお知らせ】2018年8月から1年間に渡って開催してきましたが、子供(0歳児)の生活時間への影響を考え、2019年8月開催を最後に閉会することにします。本の話をすること自体は今でも好きなので、また何か企画しようと思います。参加いただいた皆様どうもありがとうございました。大谷隆===本を読むのも好きだし、面白かった本の話をするのも好きで、たぶん一生やめられません。いつもだいたい身近にいる人にばかり話をしていて、いい加減辟易している気がするので、企画してみました。
面白かった本のどこがどう面白かったのか、というのはもちろんですが、そもそも本を読んでるときにどんなことが起こっているのか、それをできるだけ具体的に、実際に本を示しながら話ができたらいいなと思っています。外からは見えない、自分にだけ起こっていることを説明するのは難しいのですが、やってみようと思っています。
僕じゃない人が本を読んでいるときも、僕と同じことが起こっているのか。とか。同じこともあるだろうけど、違うこともあるんじゃないだろうか。とか。面白い本でも本によって違うことが起こっているんじゃないだろうか。とか。僕と本にまつわることを考えながら話します。
本好きが本について気兼ねなく思いっきりしゃべる時間にしたいと思っています。自分もなにか話したいという本好きの人も、そうでもない人もどうぞ。
大谷 隆
1回目(8月3日)の様子。
2回目(10月5日)の感想(山根みおのブログ)。
3回目(11月2日)の様子。
4回目(12月7日)の様子。
日 時:毎月第一金曜日、19時から21時ぐらいまで。
※早めに来て一緒にご飯食べたり、終了後泊まったりできます。(投げ銭)
参加費:はじめての参加は1,000円。リピート参加は投げ銭。
場 所:まるネコ堂(京都府宇治市五ケ庄広岡谷2-167)
http://marunekodoblog.blogspot.jp/p/blog-page_14.html
申 込:...