September 17, 2014

【言葉の記録2】小林健司さん 第10回

第10回  納得しやすいストーリーへの依存

大谷:
前にさ、あの、「無いの世界」の話をした時にけんちゃんが、
「無いの世界を語る言葉が無いから、
言葉で語ろうとしてる時点で、
その言葉はちょっと変な感じになる」っていうことを言っててさ、
そりゃそうだなと、すごい思ってて。

言葉自体が有るというものを前提に作られているから、
道具として適切じゃないけどそれを使わざるを得ない、
みたいなことがある。

小林:
あぁ、うん。

無いの世界:一般的なこの世界は「有るもの」によって構成され、認識されている。だから「無い」というのは「あるはずのところに無い」という欠損としての意味が現れる。しかし、もともとは、「何も無い広大な世界(無いの世界)」が「有って」、その中にところどころ「何かが有る」だけではないのか。その「無いの世界」は言葉でどう表現できるのか。言葉も「有る」を前提としている以上は、「無いの世界」を語るには不都合が出て、「ちょっと変な感じ」になる。といった小林と大谷の会話から。

大谷:
それと同じで、
子供の頃こういう体験をして、音楽に出会ってとか、
ビートルズに出会って今やってます、
みたいなストーリーって、
そういうのでその人を語るのって、やりやすい。
でも、それ以外の方法で
その人が何かっていうのって言いにくいんだよね、きっと。

みんなストーリーによっかかっているというか、
なんで今こんなことしてるんですかっていうのは、
なにかきっかけがあったからこうなっているはずっていう、
因果関係をベースにしちゃっている感じがある。
それで理解しようとしちゃうんだろうな。
だから因果関係は無いんですっていう人が現れると、
なんじゃこいつってなる(笑)。

小林:
(笑)
大谷さん、なんで訊いたの、僕に。
今、なんでそのようなのかって。

大谷:
僕自身も方向感が無いなって思っていて、
けんちゃんと似通ってると思ってる。状況的に。だから、説明してくれたらすっきりするなって(笑)

小林:
(笑)
そしたらやっぱりなかった。なるほど。
他人に頼ってでも説明したくなるよね。
僕も、大谷さんに言ってもらいたいもん。
僕がなぜこうなのか。

大谷:
そのなんか、名前もついてないし形もない、
なんでもない何かが想定されてるんだよね、きっと。

けんちゃんがこうである理由がすぱっとそれでわかるみたいな。
その理由に多分僕も乗っかれると思ってるんだけど、
今んとこそれは、ない。

小林:
解明されてないね。

なるほど、ここまで来ると特定の事象とかって言うよりは、
なにかそういう「無い世界」をちょっと表現できるような、
あれがあればいいんだけどな。まぁ、それがないから苦労してるっちゅう話だ。

大谷:
そうだね。構造を全部取り外していって、
組織はこういうところがしんどいとか、
お金はこういうところがしんどいとか、
計画はこういうところがしんどいとか、
そういうの全部とりはずしてってようやく、
なんかがあるのか、みたいな。

でもそれが何かはわからない。
っていうところまで来ました。


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