February 15, 2015

【079】「もうそこまで春が来ています」という言葉のリアリズム。

庭のもうすぐふきのとう。
庭は注意深く見る。
もうそこまで春が来ています。

使い古されていてもはや恥ずかしくて誰も口には出さない、そんな言葉。でもこれを書いてある通り、そのまま読んでみる。

「もう」

気がついた時にはすでに、取り消すことができない確かな事実として、

「そこまで」

背後、あるいは、家の前の小路を出て少し大きな道に出て、少し歩いた、角を曲がったあたり、見ようと思ってもすぐには見えないし、物音が聞こえるという距離でもないところに、

「春が」

あたたかとあざやかとさわやかを混ぜ込んだ空気の塊が、自分の周り一面を包むあの匂いが、

「来て」

自らの意思を持ち、こちらを目指して、

「います」

この場所そのものに、疑いなく、静かで確固たる断言。

この断言ができる確信を持つ者は、春自身でしかない。


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