February 6, 2015

【071】無いが足りなくなっていた。

畳が柔らかく座布団もいらない。
家賃を払いに東山のアパートへ行った。13時半頃ついたが大家さんは留守だった。とたんにやることがなくなって、とりあえず部屋に入った。

京阪三条駅から歩いてきた分で体が温まっていたから、ストーブはつけない。お湯を沸かして飲む。窓から斜めに陽が入っている。それがあたっている、入り口から見て右の壁にもたれかかる。外の音が聞こえたり隣の隣の人の音が聞こえたりする。

しばらくしてノートを開いてペンで書き始める。部屋の中にあるものはお湯を入れたマグカップを置いた丸いお盆。

他は無い。
やることは無い。

無いがたぷたぷと満ちた部屋にとっぷりと浸かる。と書くと、無いというのが水のような手触りを持つけれど、本当はそんな手触りもなくただ、濃密に在る、いや無い。

しばらくすると自分にも無いが流れこんでくる。自分が無いでいっぱいになる。自分が無い。

気が付くと2時間経っていて、もう無いで満たし終えて、これ以上無いが入らない。

帰ることにしてもう一度大家さんを訪ねたら戻ってきていて家賃を払う。

しばらくきてはらへんかったね、と言われる。
ちょっと忙しくて、と答える。
いやいや。ええんやけど、と言われる。

事務所という目的で借りているのに仕事が忙しくて来られない。来られないことをなぜか申し訳なく思っている。

無いが減ってきた時、この空っぽの部屋に来ればまた、無いで満たされる。



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