電話で佐川急便が航空便で冷凍ですよと言うので一体何が届くのだろうと澪と二人で待っていた。届いてみると真っ赤な包装紙に包まれた伊江牛だった。沖縄の糸満に住むいとーちゃんが送ってくれた。澪と二人でびっくりして、しばらく唖然としたあと、今夜はすき焼きにしようと決めて、それでまた改めて顔を見合わせて息を吐いた。こんなに牛肉を見るのも久しぶりだし、ましてや食べるとなると、今からヨダレが出そうになる。
それにしても、この何とも言えない衝撃が体を走っていくのは一体なんだろうと思う。驚いてただ呆然としてしまう。沖縄から飛行機に乗って牛がやってきた。この衝撃が日常を切り裂いて、寒い1月の宇治の曇り空に、一瞬、あの青い青い海と空と雲が映し出される。たぶんこれがハレというやつの正体なのだ。ケを切り裂き立ち現れるハレなのだ。ぞわぞわといつもとは違う感じを圧倒的に漂わせながら遠いところから突如やってくるのだ。