November 6, 2014

【026】縛る土(再掲載)

テクノロジーは夢を与えた。
テクノロジーは呪いを与えた。
以前書いていたブログを読みたいと言っていただいたので、いくつか再掲載しようと思います。

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2011年06月07日

庭で畑をやっているとあの野菜は簡単だからやるとよい、あるいは難しいなどと言われる。僕自身、以前住んでいた箕面でも畑をやっていたからその時の経験を頼りにあれは簡単に育つ、これは難しいと思い込んでいたりする。しかし、全くないとまでは言い切れないが、そういう情報は実際のところさほど参考にならない。原因を考えて、土だろうと思い当たった。

土は場所によって違う。これは想像だが、きっと同じ土地でやっている人の情報はある程度参考になるはずだ。

畑で作物を作るにはその土地で情報を蓄積する必要があるのだ。土だけでなく気候気象も。そして気がついた。そのために農業は土地から離れられないのだ。その土地から離れてしまうと単に土地を失うだけでなく、その土地固有の経験の蓄積である情報を失い、新たな場所で農業をするにはそれらを一から構築し直さなければならない。

「この土地を離れては生きていけない」という言葉の意味がわかった。そして、そのような中で生きることで形成された気質は、自然現象だけではなく、人間社会にまで及ぶのではないかと思った。「この人間関係を離れては生きていけない」と。

日本史家の網野善彦が丹念に追いかけた漂泊民の力、無縁の力は、この大地と大気と人間の縛りを逃れていることそのものなのだ。


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