May 22, 2015

【164】蕎麦を食べた。


蕎麦とじゃこおろし。
昨日のことになるけれど、蕎麦を食べようと思って夕方鰹節を削っていた。この前やった時は削る量が少なすぎて、つゆがうまくなかった。もうだいぶ小さくなって鶏の卵ぐらいの大きさになっている鰹節を測りに乗せると、それ全部で15gしかなくて、水の分量に対しては、全部削らないといけないとわかった。

箱がついていて、かんなが逆さまに付いている鰹節用の削り器はうちにはなくて、普通のかんなをひっくり返して使っている。手前のほうが高くなるようにおいて、向こう側の低くなった面を左手でおさえる。鰹節は右手に持って、奥から手前にスライドさせて削る。削った鰹節はかんなの下に溜まっていくので、テーブルの上に紙を敷いておいてそこにためていくようにする。

かんなと鰹節。
うまく削れていない。
削り始めると決まって猫のしっぽが降りてくる。しっぽはもう大人なので、ガラスの扉の向こうでただじっとこちらを見て座ったまま、わけまえを待っている。小さい猫二匹は鰹節には興味が無いようで二階から降りてこないが、こっちの二匹も鰹節好きだったら黙って座っているということはできないはずで、しきりに鳴き声を上げたはずだ。しっぽの視線を感じながら、次第に持ちにくくなっていく鰹節を削っていたら、近所のおじちゃんが庭にやってきた。

もちろん、しっぽと同じように鰹節のわけまえが欲しかったから来たわけではなくて、おじちゃんが散歩でつれている柴犬がうちに入りたがるから、いつもやってくる。アラレちゃんというその犬は、少し前に近所を一人で歩いているところを僕と澪が見つけて、保護したことがある。その時はそのおじちゃんのところの犬だとは知らなかったから、夕方見つけてから夜遅くまで、近所を歩き回って、その柴犬に見覚えはないか、そういう柴犬を飼っているという情報はないかと探した。犬は散歩で出歩くので犬を飼っている人のネットワークは猫好きのそれよりも活発で、いろんな情報が次々と出てきたが、なかなか当人まで行き当たらなかった。あとで考えると一人だけ正解を言っていた人がいたのだけど、結局夜遅くなっていたので、捜索を諦めて、家に犬を入れて一晩様子を見ることにした。

翌朝、おばちゃんがやってきて、うちの犬、来てますかという。昨夜澪が描いて出しておいた犬の似顔絵と「迷い犬保護してます」という看板を手に持っている。こうしてあっさりと飼い主のところに戻ったのだけど、このおばちゃんとおじちゃんというのが、うちから出て右手、50メートルほどのところに住むご近所さんで、それ以来ちょくちょくやってくる。どういうわけか、アラレちゃんに僕も澪もものすごく気に入られたらしく、散歩で家の前を通るたびに庭まで力ずくで入ってくるのだ。おじちゃんとおばちゃんは、家庭菜園をしていて、そこそこの量の収穫があるようで、それ以来、かぼちゃ、玉ねぎ、さつまいもといったように何かと持ってきてくれる。

今日もおじちゃんのあとからもう一匹の小さめの犬を連れたおばちゃんがついてきて、「この前の玉ねぎ美味しかった」と僕がいうと「大根あげたかな」という。もらっていないというと、家まで来たら上げるよ、となって「辛味大根やから普通のとちごて辛いけどな」「ちょうど蕎麦にしようと思ってたからうれしい」などといって、家まで一緒にいく。

おじちゃんたちの家まで行くと、庭で作っているかぼちゃやニラやきゅうりの話をして、大根をもらって帰ってくる。まだしゃきっとした葉っぱがついた大根の葉を切ってゆがいてからごま油と醤油と味醂で汁が飛ぶまで煮てふりかけのようなものにする。それから澪が蕎麦を打ち、辛味大根をおろして、食べた。たまたま直前に実家からちりめんじゃこをもらっていて、それを大根菜のふりかけにも入れる。大根おろしも少し蕎麦の分とは分けて、じゃこおろしにして醤油をかけて食べる。昨夜のとても都合の良いご馳走はそんな風にして出現した。



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