May 1, 2015

【141】織る、編む、紡ぐ、ではなくて漉く。

白紙。
人が生きていく中で何かを作り上げることを比喩として、「織る」とか「編む」とか「紡ぐ」とか言う。

織るは、経糸と緯糸という2本の糸から現れる。例えば、自他。
編むは、1本の途切れない糸から現れる。例えば、人生。
紡ぐは、曖昧な多数から一本の糸が現れる。例えば、物語。

しかし僕が僕の何かを作り上げるやり方を言おうとした時に、何かを織ったり、編んだり、紡いだりしているイメージはない。そういう言葉でうまく言えた気がしないというよりは、そういうやり方を試してみるのだけどうまくできないことが多い。

ではどうやっているかというと、漉く。

漉くは、紙とか海苔とかをつくること。すく、と読む。

漉くは、大小様々な繊維がバラバラの方向を向いて水の中を漂っている。
少しずつだけど、常に移動し続けている。
それを、ある一瞬、すのこで掬いあげて、平面として定着させる。

織る、編む、紡ぐのように連続的な反復によって少しずつ進行するのではなくて、ある一瞬で、その時の状態を転写するように固定する。

すくい上げられるまでの時間、バラバラで脈絡のない断片の非連携的な集合としてただ水中に漂っているというところが、悲しくもあり、楽しくもある。


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