January 10, 2015

【047】だらだらできる場所

能の「くつろぐ」は、演者が観客に背を向けた状態で、
その場にいないことになるらしい。
うちにはだらだら出来る場所がないと唐突に澪が言い出した。こたつがあってテレビがあって、だらだらできるような場所。そう言われるとない。うちは2階建てで、1階は半ばオープンな場所として、プライベートを感じさせる物はなるべく排除している。

2階は、3部屋あって、4畳半の和室と4畳半の元フローリングで今は畳を3枚入れた部屋と8畳程度のフローリング。最初の和室は寝室として、布団とファンヒーターだけおいてある。元フローリングの4畳半は、澪がもらってきたキャンバスがそのうち絵を描かれるためにただ立てかけてあって、それ以外には何もない。最後のフローリングは事務スペースとして、机が2つあって、パソコン作業などをする。服などの私物はこの事務の部屋に入れてある。

自分の家の中なのに、私物とそうでない物がある時点でちょっと変なのだけれど、そういうわけで、だらだらできる場所といえるところはない。強いて言えば最近借りた東山のアパートがそうなんだけど、ここはそれこそ僕達以外のメンバーがいつ来るかわからないという意味で、オープンな場所。

とりあえず、2階の事務所兼プライベートスペースが一番閉鎖的なので、だらだらしたい時はここでするのが良さそうということに落ち着いた。

でもまぁ、僕の場合は、だらだらしている時としていない時の違いがあまりないので、そもそもそういう場所を欲していないのかもしれない。

だらだらできる場所って昔からあったのだろうか、とふと思う。これも近代というものが産みだした代物かもしれない。個室とか居間とかそういう概念はいつ頃どのように形成されたんだろうか。なんとなくワイシャツとかシーツとかと同時期の気がする。そしてそのころに恋愛結婚なんかが出てきてつまり、「部屋とYシャツと私」だったりして。


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