生きている間は何年も放置されたはずなのに、 死んでから半年で処理しなければと思うのはなぜか。 |
そんなことを思いながら束を見ていたら、住所の最後に「死去されているので削除」と書いてあるものを一枚見つけた。
あとでデータを削除しようとしたのだけれど、削除しそこねて出してしまったのだろう。思わず笑ってしまったが、その上でこの言い回しに興味が湧いた。
本来は届いた側の人の目に触れるはずがない作業上の目印のための文言に過ぎないわけだから、効率から考えると「死去のため削除」もしくは単に「削除」でいい。もっと言えば何かしらの記号でも良いはずなのに、11文字も使っている。
データを削除するという行為、その人はもういないということを記すという自らの手の動きのなかで、こういった言い回しを選んだということに、その人の死者への敬意を感じる。
本来であれば届くことはなかった敬意の痕跡。