先日、宅配便が届いた。20kg入りぐらいの紙の米袋だ。差出人に心当たりがなくて、ネットで何か買ってたかなとか、誰かのいたずらかなとか、かなりドキドキしながら開封してみた。
入っていたのは、小麦、小豆、大豆、うずら豆、モロッコ豆、オカボ。そうしてようやくわかった。トムだ。
トムのお父さんは日本人なので、トムはこういう名前だったのだ。漢字4字の日本人名だったから、トムの風貌を思い描くことができなかった。僕にとっては、はじめて会った時からトムはトムだった。
トムだとわかるととたんに楽しくなってきた。澪と二人で大興奮しながら、袋の中身を確かめていった。手書きの手紙も入っていて、うずら豆やモロッコ豆やオカボはいつ植えるといいとか書いてくれている。手紙にも名前はなかったけれど、トムの姿が鮮明に浮かび上がった。トムはこういう人だ。
米袋にぎっしり入れてくれたものたちはおそらくトムが自分の畑でつくったものだ。
オカボというのは、漢字で書くと陸稲。この間トムが来た時に、うちの庭の片隅の畑を見て、ここでリクトウできますよ、と言っていた。オカボはスパイスの瓶に入れてくれている。
小麦粉になっていない小麦の実物を見たり触ったりするのは初めてだった。早速、米に混ぜて炊いてみた。玄米を混ぜるよりもずっと歯ざわりが良くて美味しい。香りもちょうどいい感じで、早速カレーを作って食べた。よく合う。
それ以来、米を炊くときは毎回トムの小麦を混ぜて「トムギごはん」と呼んでおいしく食べている。
そうして、お返しに何を送りつけてやろうかと、企んでいる。