April 26, 2015

【135】読んで書くだけ。

万年筆にインクを入れるのが好きだけれど、
最近はペンよりもパソコンを使うことが多い。
最近、できることが減ってきている。まともな仕事らしいことをやろうとしてもなかなか着手できない。着手できても続けられない。できたとしても達成感がない。お金を儲けたいという欲求があまりないから、お金をもらうことでの満足感すら得られない。だからといってお金が無いと不安が立ち上がって、苛立ちが出現する。

できることといえば、読むこと、そしてかろうじて書くことぐらいで、それ以外はろくにできないし、ろくなことをしない。

編集の仕事を始めた頃、読むことと書くことぐらいしか僕にはとりえがなかったから、それをやるしかなくて、それは僕自身が大切にしてきた自分の場所そのもので、それが僕自身の外的な評価に直結していたからとても楽しかった。しかし、だんだんと時間が経つにつれて、読むことと書くことよりも、進捗を管理することのほうが編集の仕事のメインになっていった。そうしていつしか僕は編集の仕事すらも苦痛を感じるようになっていた。

そういうふうに仕事の中身を変えていったのは僕自身で、それは、読むことと書くことという僕自身の居場所に居続けること、そこで勝負することにだんだんと耐えられなくなってしまったからだ。自分の「ホーム」からなるべく遠く、それでいて自分の「その他の力」が有効に活用できるところで僕は仕事をするようになっていた。そのほうが何かあった時に安全だから。自分が傷つかなくて済むから。

皮肉なことに今になってこうやって、僕の力が使い物になる範囲が狭くなっていく撤退戦の果てに、僕は僕自身の場所を鮮明に意識せざるを得なくなった。もうそこにしか僕の場所はない。読んで書くこと、そして考え続けることぐらいしかまともなことはできない。こういうのもミニマリズムというのだろうか。できることのミニマリズム。

物心ついて、文字を追うようになってからずっと、僕は読むことがとにかく好きだった。書くことと書く人に憧れていた。そういうことを思い出した。


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