3匹いるうちの2匹。去年の4月、生まれた直後に保護して1年と少したった猫の避妊手術をすることにした。どちらもメスで、今年の春ぐらいから発情期に入った。
発情期特有の鳴き声は、最初はちょっと気になったが慣れてしまえばどうということはない。背中を床にこすりつけるようにしてゴロゴロと寝転がっていたり、ロードーシスと言われる背中を平にしてお尻を上げてオスを誘うような仕草も人間にとって何も不都合はなくて、「このやらしいメス猫め!」なんてことを言いながら首をかいてやったりする。
ただ、どうしてもつらいのが、スプレーという行為で、おしっこをところかまわずする。オスを惹きつける匂いを出しているらしいのだけど、もう何にでも引っかける。携帯電話も壊されたし、最近では、自分たちの水飲み用の容器にまでするようになって、しょっちゅう水をかえてやらなければならない。
スプレーがありとあらゆるものに及ぶので、人と同じ空間にいることが難しい。それまでは寝るときは一緒に布団に入れたりしていたけれど、今は別々の部屋にいる。ただ、手術をすれば確実にスプレーしなくなるかというとそういうわけでもないらしく、そのあたりも難しい。
残りの一匹はオスだけど、こちらは去勢済み。3匹とも家から出すつもりはないので、メス猫2匹が妊娠する可能性はない。
最初から何もかも人間の都合にすぎないのだけど、人間の都合というものによってこの猫はここにいるのだから、その人間の都合というのをギリギリまで見るしかなくて、それは主に人間の側にある。
できれば飼い猫というよりも半野良猫として生きていければいいのだろうけれど、ここにいる限りもうそれは望めそうにない。そもそも野良猫が野良猫として人とともに生きられる世界というのが今や幻想にすぎないのか。たとえ猫エイズや伝染病が広がっていなかったとしても、それはもう不可能なのだろうか。この社会の中で人が感じる生きにくさというものが野良猫の生きにくさと関係があるのか。
そんなことを考えながら手術の日を待つ。