昨日のこと。
朝、新(あらた)が布団で泣いている。僕は眠くてなかなか起きれない。澪はすでに起きて階下に行っている。しばらく泣き続けてようやく僕が起き出しておしめを替えようと顔を見たら、右目から涙が一筋流れていた。
僕が見たはじめての新の涙である。澪は最近何回か見ていたようだ。
どうやらまだ、必ず涙を流すわけではないが、そのうちだんだんと涙を伴って泣くことが増えていくのだろうか。きっとそうだろう。
嘘泣きではなく、本当に泣いていると自覚しているとき、大人は涙を流していると思う。あるいは、涙をこらえている。涙が流れていることを指して、泣いている、という言葉で表現するとさえ言ってもいいかもしれない。しかし、それは生まれつきのことではなかった。
こういうことは、乳児の発育に関わる人にとっては当たり前のことなのだろうか。僕にとってはとても大きく驚くことだ。人が、生まれて育っていくということが、いったいどれほどの領域を含んでいるのか。新と一緒にこれから少しずつ、それが見ていけるのは、かなり楽しみなことだ。