November 20, 2018

【502】自分に関わる連絡手段を一新してしまいたい欲望に時々かられる。一種の放浪癖。

澪の父親は携帯電話を持っておらず、連絡をとろうと思うと自宅の固定電話にかける以外にない。外出するときなどで必要があれば澪の弟に一日100円で携帯電話を借りていくらしい。メールもしない。僕が大学生ぐらいまでは、それが当たり前だったが、今となってはかなり特殊な連絡環境にあるように見える。

僕は時々、というか定期的に、連絡手段の何もかもを変えてしまいたいという衝動に駆られることがある。放浪癖のマイナー版である。2年ほど前になるだろうか。東山の和室と呼んでいた古いアパートの一室を共同で借りていたとき、たぶん僕はそういうマイナーな放浪癖を満足させようと思っていた。あの小さな一室に一人でぼーっとしている時間は、ようするに放浪していたということなのだ。

放浪は現状に対するアンチテーゼではあるけれど、現状への怨嗟ではない。現状を愛しているが故に、現状から距離をおきたくもなる。現状を濃厚にし続けているから、その現状に自家中毒を起こす。こういう気分を何度も何度も繰り返してきた。そのたびに少しずつ違う代替案を開発し続けてきたとも言える。

自宅に居ながら放浪することができればそれが一番いいのではないか。そしてそれは慣れ親しんだ状況の気がする。



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