November 12, 2018

【490】残存しているうちで最も古い記憶以外の記憶のありか。(生後67日目)

僕自身が覚えている最も古い記憶はたぶん、造形教室で紙粘土をこねたり、投げていたずらしたりしていたアレだと思う。3歳か4歳か。

といっても、これは、アレだと名指しできる程度の明度を持った記憶のことで、名指しできるほどの明度を持たない、もっとぼんやりとしたある雰囲気といった程度の記憶は、他にもあるような気がする。

これは、スペインのラパシエガ洞窟に残された6万4千年前の壁画が、人類にとって最初の壁画ではなく、たまたま現在まで残っている絵画のうちで最も古いということに似ている。

当然のことながら、ラパシエガ洞窟の壁画以前にも膨大に絵は描かれた。ただそれらは残っていないか、残っていたとしても見つかっていない。現在の人類が行っている「絵を描く」という出来事の全体性の中に、スペインの特定の洞窟の壁画だけが影響しているわけではなく、それ以前の現存していない多くの絵画の影響も残っている。

この日記に書かれているような出来事は、当然、新(あらた)が大人になったときに記憶として残っている可能性はほぼない。少なくとも明示的に名指しできる記憶としてはおそらく残らない。でも、だからといって、全くなんの痕跡も残さないということももちろんなくて、たぶん、人間が記憶するという仕組みのどこかに「思い出せる記憶」「名指しできる記憶」というものではない形で、残るのだと思う。

こういうことは当たり前すぎてわざわざ文字にするほどのことでもないように思うのだけど残しておく。



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